セブンティセブン・グリニッジ(77 Greenwich)は、ファイナンシャル・ディストリクトのグリニッジ・ストリートに立つ42階建て、90戸のコンドミニアムで、分譲時の名称はジョリー(Jolie)です。開発はトリニティ・プレイス・ホールディングス、設計はFXコラボレイティブ、内装はディーボラ・バーク・パートナーズで、2021年に竣工しました。低層部に公立小学校が入り、敷地の角には1810年に建てられたロバート・アンド・アン・ディッキー・ハウスが保存されています。
この建物を題材にするのは、戸数の少ないタワーを買うときの見方を考えるためです。90戸という規模は、大型タワーと違って成約の数が少なく、価格の根拠が作りにくい半面、売り手の事情が価格に出やすい建物です。販売の経緯、価格交渉の余地、そしてどの名義で持つかを、この建物で具体的にたどります。
1. 建物の概要。42階建て・90戸

セブンティセブン・グリニッジは、細長い敷地に立つガラスの塔で、住戸は15階以上に置かれています。低層の1階から5階は市の公立小学校で、住戸の入口と学校の入口は完全に分かれています。住戸は1ベッドルームから4ベッドルームまでで、各階2〜3戸、上層階はフロアに1戸です。
共用施設は、屋上のテラス、ジム、住民用ラウンジ、子どもの遊び場、犬の洗い場で、規模は控えめです。敷地の角に保存されたディッキー・ハウスは、この地区に残る数少ない連邦様式の住宅で、学校の施設として使われています。地下鉄はレクター・ストリート駅が目の前、ワールドトレードセンターの乗換駅も徒歩圏です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 77 Greenwich Street, New York(ファイナンシャル・ディストリクト) |
| 竣工 | 2021年 |
| 階数・戸数 | 42階建て・90戸(住戸は15階以上) |
| 設計・開発 | FXコラボレイティブ(設計)、トリニティ・プレイス・ホールディングス(開発) |
| 形態 | コンドミニアム |
| 主な施設 | 屋上テラス、ジム、ラウンジ、遊び場、低層部に公立小学校 |
ファイナンシャル・ディストリクトは、オフィス街から住宅地へ変わってきた地区で、転用された古いビルと新築タワーが混在します。地区の成り立ちと物件の傾向はファイナンシャル・ディストリクトのエリア記事にまとめています。
2. 販売の経緯と価格交渉の読み方

分譲は2019年に始まりましたが、竣工が新型コロナの時期と重なり、販売は長引きました。開発会社は途中で価格を引き下げ、複数戸をまとめて投資家に売る手法も使い、完売までに数年を要しています。1ベッドルームが100万ドル台、2ベッドルームが180万〜250万ドル、3ベッドルームが300万ドル前後で、1平方フィートあたり1,500〜1,800ドルと、地区の新築としては中位の水準です。
ここから読めるのは、売り手の事情が価格に出やすい建物だということです。戸数が少ない建物では、開発会社が最後の数戸を早く手放したい局面や、まとめ買いした投資家が転売する局面で、周辺相場より低い成約が生まれます。同じ建物の成約が少ないため、指値の根拠は建物の中ではなく、地区の似た築年の建物から取ります。比較対象は、転用型のワン・ウォールストリートと130ウィリアム、公園向きの25パークロウです。
買う側の判断は、低い成約を「建物の評価が低い」と読むか「売り手の事情」と読むかで分かれます。周辺の新築と比べて仕上げや眺望に劣る点がなければ、後者と読んで指値を入れる余地があります。
3. 賃料と維持費の釣り合い。戸数が少ない建物の管理費

賃料は、1ベッドルームで月5,000〜6,000ドル、2ベッドルームで月8,000〜10,000ドル、3ベッドルームで月12,000ドル前後が目安です。
維持費で確認するのは、戸数が少ない建物の管理費の構造です。90戸で分けるため、ドアマンとエレベーターの保守の1戸あたりの負担は、数百戸のタワーより重くなります。コモンチャージの中身と適正水準に整理したとおり、予算書で人件費の比率と積立残高を確認します。
もう一つ確認するのは、低層部の小学校との権利関係です。学校部分は市が所有し、住戸部分とは別の区分になっています。共用部分の費用の按分と、外壁や設備の修繕をどちらが負担するかは、管理規約と分譲時の開示書に書かれています。手取りの利回りは2%前後で、地区の他の新築と同じ水準です。
4. 購入の実務と名義の設計
セブンティセブン・グリニッジはコンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入でき、理事会の承認面接はありません。法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。まとめ買いした投資家が転売する住戸は、賃借人が入ったまま売られることがあり、その場合は賃貸契約の残期間と賃料を引き継ぎます。
非居住者が個人名義で貸すと賃料に対する源泉徴収が30%かかり、申告で経費を引く選択をしなければ手取りが大きく削られます。LLC名義にすると、賃料の受け取りと経費の計上を法人の側に置けます。仕組みはLLC名義での保有と税務にまとめています。売却時にはFIRPTAの源泉徴収が売却価格に対してかかり、申告で精算するまで資金が戻りません。
相続を見通すなら、米国の遺産税の非居住者控除が6万ドルしかない点を、買う前に織り込みます。200万ドルの住戸を個人名義で持ったまま相続が起きると、控除を超える部分に最高40%の税率がかかります。名義の設計は、購入後に変えると譲渡税がかかるため、契約前に決めます。
取引の際には、地区の似た築年の成約、予算書と積立残高、学校部分との費用按分、賃借人の有無を書面で確認してください。
5. まとめ
セブンティセブン・グリニッジは、販売の経緯から売り手の事情が価格に出やすい建物で、指値の余地がある一方、出口では地区の相場に戻ると考えて計算します。戸数が少ない分の管理費の構造と、学校部分との権利関係を確認し、名義を先に決めることが、この建物での設計の要点です。
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よくある質問
セブンティセブン・グリニッジはどこにありますか。
ファイナンシャル・ディストリクトの77 Greenwich Streetです。地下鉄のレクター・ストリート駅が目の前で、ワールドトレードセンターの乗換駅も徒歩圏です。分譲時の名称はジョリー(Jolie)です。
セブンティセブン・グリニッジは何戸ありますか。
42階建てで90戸です。住戸は15階以上に置かれ、1階から5階は市の公立小学校です。2021年竣工、設計はFXコラボレイティブ、開発はトリニティ・プレイス・ホールディングスです。
低層の小学校は住戸の費用に影響しますか。
学校部分は市が所有し、住戸部分とは別の区分です。共用部分の費用の按分と修繕の負担区分は管理規約と分譲時の開示書に書かれているため、契約前に確認します。入口は完全に分かれています。
外国籍でも購入できますか。
コンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入でき、法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。賃借人が入ったまま売られる住戸は、賃貸契約の残期間と賃料を引き継ぎます。
所在地
77 Greenwich Street, New York。位置はGoogleマップでご確認いただけます。
BUILDINGS
ニューヨークの主な建物。名義と税務の観点から
ビリオネアズロウと57丁目
- セントラルパークタワー — 世界一高い住宅ビル
- One57 — ビリオネアズロウの先駆け
- 432 Park Avenue — 正方形窓の超高層
- 220 Central Park South — 全米住宅最高額の記録
- 111 West 57th — 世界で最も細い超高層
- 53 West 53rd — 近代美術館の上に住む
- Mandarin Oriental Fifth — ホテルブランドの住まい
- エセックスハウス — 公園南のアールデコ
- オズボーン — 1885年の石積み
セントラルパーク西の戦前建築
- ダコタハウス — 1884年、市内最初期の高級住宅
- サンレモ — エメリー・ロスのツインタワー
- ベレスフォード — 三本の塔と博物館の眺め
- エルドラド — 公園西の最北、貯水池の眺望
- センチュリー — 公園西で最も中心に近い
- マジェスティック — ダコタの向かい、急行駅前
- One Central Park West — コロンバスサークルの角
- 15 Central Park West — 新築で戦前の風格
パークアベニューとイーストサイド
- 740 Park Avenue — 世界で最も入りにくい住宅
- 520 Park Avenue — 戦前の格を新築で
- オリンピックタワー — 五番街の複合の先駆け
- リッツ・カールトン・レジデンス — ホテルブランドの実際
- シェリーネザーランド — ホテル機能を持つコープ
- リバーハウス — 川に正対する名門コープ
- One Sutton Place South — 借地の上に立つ建物
- サットンタワー — イーストリバー沿いの新築120戸
- 252イースト57丁目 — 分譲と賃貸が同じ塔、値下げの履歴
- ワンビーコンコート — オフィスの上に住む複合ビル
- 200イースト59 — 全戸テラス67戸、屋外面積の評価
- マンハッタンハウス — 戦後モダニズムの代表作
- ウォルドーフ・アストリア — 歴史的ホテルの住宅転用
- プラザ・レジデンス — 1907年の名門ホテル
- アマン・ニューヨーク — クラウンビルの最上位ブランド
- 400 Fifth Avenue — 商業地区に住むという選択
アッパーウエストとグラマシー
- アンソニア — ホテルから賃貸、コンドへ
- アプソープ — 1908年の中庭型、名義の自由
- ベルノード — 賃貸から分譲への転換
- 200 Amsterdam — 建築許可をめぐる訴訟
- 50 Gramercy Park North — 公園の鍵という権利
- マディソンハウス — ノマドの新築タワーと管理費
- 30イースト31 — 42戸の細身タワーの価格帯
- ワンマディソン — 築10年超の53戸と転売
- 277フィフスアベニュー — 5番街の住所は価格に乗るか
ダウンタウンとトライベッカ
- ウールワースタワー — 1913年の超高層に住む
- ワンウォールストリート — オフィス転用と減税
- ザ・グリニッジ — 125グリニッジの88階建て273戸
- 25パークロウ — シティホール公園向きの価格差
- 77グリニッジ(この記事)
- ワン・ビークマン — シティホール・パーク前のフロア1戸31戸
- 56 Leonard Street — 新築分譲の取得コスト
- 111 Murray Street — 大型間取りの市場
- 130 William — 固定資産税の読み方
- 30 Park Place — ホテル併設レジデンス
- 45パークプレイス — SOM設計50戸と値引き後の価格
- 100バークレー — 1927年電話局を改装した157戸
- 101ウォーレン — フルブロック227戸の価格帯
- 200チェンバーズ — プール付き258戸の維持費
- ビークマン・レジデンス — 賃貸運用向けの間取り
- 443 Greenwich — 倉庫転用と面積表示
- 565ブルームソーホー — レンゾ・ピアノ設計の112戸
- 42クロスビー — 10戸と100万ドルの駐車場の評価
- 10サリバン — ソーホー西端の22戸と小規模コンドの注意
- 108レナード — ランドマーク改装の167戸
- グリニッチレーン — 5棟とタウンハウスの構成
- 130ウエスト12丁目 — 病院跡コンバージョンの評価
- パックビルディング — 6戸だけのペントハウス
- ザ・シューマッハ — 印刷所転用20戸の維持費
- 70ベストリー — 川沿い46戸、少数戸を持つ意味
- 160レロイ — ウエストビレッジ川沿い57戸の値付け
- 150チャールズ — 低層91戸と中庭の維持費
- One Manhattan Square — 大型タワーの出口
- ワンハイライン(旧XI) — 開発会社の破綻と再生
ハイライン・ハドソンヤーズ
- 520 West 28th — ザハ・ハディド唯一のNY住宅
- ランタンハウス — デベロッパーの実績の見方
- 100 Eleventh Avenue — ガラス外壁の維持費
- 15 Hudson Yards — 新開発地区の評価
- 35 Hudson Yards — 似た2棟をどう比べるか
- ハドソンヤーズの住宅 — 竣工前契約の実務
- ザ・コートランド — レンガ外装と資産価値
- ウォーカータワー — 電話局のコンバージョン
- 25 Columbus Circle — 建物の改名と資産価値
ブルックリンとクイーンズ
- ブルックリンタワー — 区で初めての超高層
- ブルックリンポイント — 屋上プールの高層
- クワイタワー — 公園に守られた眺望
- ワン・ブルックリンブリッジパーク — 倉庫転用の449戸と公園への支払い
- イレブン・ホイト — 481戸の価格帯と減税の残存年数
- スカイラインタワー — クイーンズ最高層
- オリンピア・ダンボ — ブルックリン最高額の物差し
比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。
購入の実務ガイド
NEIGHBOURHOODSニューヨークの街と、他都市との比較(37件)
マンハッタンの街
- アッパーウエストサイド — 戦前の名建築と子育て環境
- カーネギーヒル — 美術館の並びに住む
- ヨークビル — 地下鉄新線が変えた買い場
- タートルベイ — 国連の街の静かな買い場
- グラマシー — 鍵のある公園に面した街
- フラットアイアン — ロフトの広さと価格
- ノマド — マンハッタン中央部の相場
- チェルシー — ハイライン沿いのレジデンス
- ウエストヴィレッジ — 石畳の歴史地区
- グリニッチビレッジ — 低層の街と戦前コープ
- ノーホー — 数ブロックのロフト一等地
- ソーホー — ロフト市場の実態
- ロウアーイーストサイド — 変わり続ける街の値段
- 金融地区 — ウォール街に暮らす
- ハーレム — ブラウンストーン1棟と賃料規制
ブルックリンの街
- ブルックリンハイツ — 全米初の歴史保存地区
- コブルヒル — ランドマーク地区のブラウンストーン
- キャロルガーデンズ — 住みながら貸す二戸建て
- ボーラムヒル — 学区の境界は住所ごとに違う
- フォートグリーン — コープが多い地区で海外から買う
- プロスペクトハイツ — 固定資産税の減税が切れる日
- ダウンタウンブルックリン — 供給が集中した地区の出口
- ダンボ — 倉庫街から高級住宅地へ
- グリーンポイント — 水辺エリアの家賃相場
ニューヨークを他の都市と比べる
- 東京 — 価格・価値観・法規制の違い
- ロサンゼルス — 戸建ての街と縦の街
- マイアミ — 税金ゼロの魅力と流動性
- ハワイ — 持ちたい場所として比べる
- トロント・バンクーバー — 外国人購入禁止の国と開かれた市場
- パリ — 石の街の資産と縦の街の資産
- 香港 — アジアの富の置き場所
- シドニー — 外国人規制の壁
- ロンドン — 英米の不動産投資の違い
- 世界の主要都市 — ドバイ・シンガポール・ロンドン・東京
- 全米の主要都市 — 価格・家賃・利回り・値上がり率
- 米国内の他都市 — ニューヨークだけが違う7点
- 日米の投資比較 — 利回り・税制・リスク
エリアの全体像と購入の実務
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