アメリカの不動産にどんな税金がかかるのか。この質問に答えるのが難しいのは、連邦、州、市の3層で別々に課税されるうえ、日本にお住まいかどうかでも扱いが変わるためです。
日本の税理士に相談しても「米国側は分からない」と言われることが多いのは、この構造が理由です。
そこで本日は、購入、保有、売却、相続の4段階に分けて全体像を整理します。どの段階で何がかかるのかが分かれば、専門家への相談も具体的になります。
1. 購入するときの税

日本では不動産取得税と登録免許税がかかります。アメリカでは、州と市が独自に譲渡税を課します。
ニューヨーク市の場合、市の譲渡税が住宅50万ドル超で1.425パーセント、州が0.40パーセント。これらは原則として売主の負担です。
買主が負担するのは、100万ドル以上の住宅にかかるマンションタックス(1.00〜3.90パーセントの8段階)と、ローンを使う場合の抵当権記録税です。
加えて、タイトル保険、弁護士費用、登記費用などを合わせたクロージングコストが物件価格の3〜6パーセント程度かかります。詳しくはマンションタックスの記事とクロージング費用の記事にまとめています。
2. 保有しているときの税

保有中にかかるのは固定資産税と、賃貸に出す場合の所得税です。
固定資産税は州によって大きく異なります。ニューヨーク市の住宅用コンドミニアムでは市場価格の年0.6〜1.2パーセント程度、テキサスでは年2パーセントを超える地域もあります。日本の固定資産税より高い水準だとお考えください。
賃貸に出す場合、ここが日本の方にとって最大の注意点です。米国の非居住者が受け取る賃料は、原則として総収入の30パーセントが源泉徴収されます。経費を引く前の金額に対してかかるため、実際の利益を超える負担になり得ます。
これを避けるには、賃貸を米国内の事業として扱う選択を行い、確定申告で経費を差し引いた利益に課税してもらう形にします。この選択をするかどうかで手取りが大きく変わるため、賃貸に出す前に会計士とご相談ください。
賃貸運用の実務は買った物件を貸す場合の記事にまとめています。
3. 売却するときの税

売却益にはキャピタルゲイン税がかかります。1年超保有していれば長期譲渡益として扱われ、連邦税は所得に応じて0、15、20パーセント。高所得層には純投資所得税3.8パーセントが加わります。
それでは、売却時の主な項目を表で整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長期譲渡益(連邦) | 0/15/20% + 純投資所得税3.8% |
| 州・市の税 | 州により別途。ニューヨークはあり |
| 非居住者の源泉徴収 | FIRPTAにより売却代金の15%(減額申請可) |
| 譲渡税 | 売主負担が慣行(市+州で約2%) |
| 繰り延べの選択 | 1031エクスチェンジで次の物件へ繰り延べ可 |
※上記は2026年時点の一般的な整理です。個別の適用は会計士にご確認ください。
非居住者にとって重要なのがFIRPTAによる15パーセントの源泉徴収です。利益ではなく売却代金の総額に対してかかるため、資金繰りに影響します。事前の減額申請という手続きがあるので、売却を決めた段階で準備してください。
出口の設計は出口の税金ガイドと1031エクスチェンジで売却益を繰り延べるにまとめています。
4. 相続するときと、日米の二重課税

最後に、多くの方が見落とされる論点です。
米国に不動産を持つ非居住者には、米国の遺産税がかかります。米国市民や居住者には大きな基礎控除がありますが、非居住者の控除額は極めて小さく設定されています。数千万円規模の物件でも課税対象になり得ます。
そして日本にお住まいであれば、同じ資産に日本の相続税もかかります。この二重課税は、日米相続税条約と外国税額控除によって調整されますが、自動的に解決するわけではなく、申告での対応が必要です。
対策としては、法人名義での保有、トラストの活用、共有名義の設計などがありますが、いずれも米国と日本の両方の専門家による設計が前提になります。相続の基本はアメリカ相続税の記事とトラストの記事をご参照ください。
アメリカの税金は本記事のほかに、テーマ別に次の記事で解説しています。税金の全体像、所得税の税率と仕組み、確定申告で使える控除、不動産にかかる税金。ご自身のテーマに近いものからご覧ください。
売却時に非居住者へかかる源泉徴収はFIRPTAの解説記事で、購入代金を守る仕組みはエスクローの解説記事で詳しく扱っています。
まとめ

アメリカ不動産の税は、購入時より保有時と出口で効いてきます。とくに非居住者の賃料源泉徴収30パーセントと、売却時のFIRPTA15パーセント、そして遺産税の控除の小ささ。この3つを知らずに買われると、後から想定が崩れます。
逆に言えば、この3つは事前の手続きで対処できるものです。買う前に設計しておくことが、そのまま手取りの差になります。
当社では、提携する米国の会計士・弁護士と連携し、ご購入前の設計段階からご相談を承っております。
※本記事は一般的な情報提供であり、税務・法務の助言ではありません。税率や控除額は改正されます。実行の前に、必ず米国および日本の専門家にご確認ください。
よくある質問
アメリカで不動産を買うとどんな税金がかかりますか。
購入時には物件所在地に応じた取得関連の税(ニューヨーク市ならマンションタックスなど)、保有中は固定資産税、賃貸に出せば所得税、売却時には譲渡益への課税があります。州と市によって体系が大きく異なります。
日本と大きく違う点はどこですか。
固定資産税の水準が州や郡によって大きく異なること、売却時に非居住者への源泉徴収(FIRPTA)があること、そして減価償却の効かせ方に柔軟性があることです。日本の感覚のまま計画すると、保有コストと出口の手取りを見誤ります。
FIRPTAとは何ですか。
外国人が米国不動産を売却する際、売買代金から一定率を源泉徴収する制度です。実際の税額より多く徴収された場合は、申告により還付を受けられます。売却の手取りが一時的に減るため、資金計画に織り込んでおく必要があります。
日本での申告も必要ですか。
日本の居住者は、米国の不動産所得も売却益も日本で申告の対象です。米国で納めた税は外国税額控除の対象になります。日米それぞれの申告が毎年必要になるため、両国の制度を知る会計士の体制を先に作っておくのが確実です。
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