2026年10月24日 Reinvent編集チーム

ニューヨークの家賃の値上げに上限はあるか。8.38%を超えると不当とされる部屋と、対象外の部屋

ニューヨーク市の市場家賃の部屋でも、州の「正当な理由による立ち退き法(Good Cause Eviction)」の対象なら、8.38%を超える家賃の値上げは不当とみなされることがあります。市の住宅局(HPD)によると、2026年5月4日時点の基準は、物価の上昇率3.38%に5%を足した8.38%で、どれだけ物価が上がっても10%が上限です。

 

ただし、対象から外れる部屋も多くあります。コンドミニアムとコープの住戸、州内で合計10戸以下しか持たない貸主の部屋は対象外です。日本からコンドを1戸持って貸している場合、その部屋はこの法律の対象になりません。

 

この記事の要点

  • 対象の部屋では、8.38%を超える値上げは不当と推定され、最後は裁判所が判断します
  • 基準は物価の上昇率に5%を足した率で、上限は10%。毎年見直されます
  • コンドとコープの住戸、10戸以下の小さな貸主、2009年以降に建った建物などは対象外です
  • 対象外の部屋でも、貸主は契約と更新のときに、対象かどうかを書いた通知を渡します

 

本日はニューヨークの家賃の値上げのルールについて見ていきましょう。

 

 

1. 正当な理由による立ち退き法とは。2024年4月から

ニューヨークの賃貸アパートが並ぶ通り

 

 

市場家賃の部屋に広がった保護

HPDの正当な理由による立ち退き法の案内によると、この州法は2024年4月20日に施行されました。家賃安定化ではない「市場家賃」の部屋の入居者に、新しい保護を与える法律です。

対象の部屋では、貸主が契約を終わらせるには原則として「正当な理由」が要ります。入居者は、住宅裁判所での立ち退きの手続きで、この法律を自分を守る主張として使えます。

8.38%2026年5月4日時点の値上げの基準
10%基準の上限。物価が大きく上がっても超えない
10戸以下対象外になる小さな貸主の持ち戸数(州内の合計)

 

立ち退きを求められる「正当な理由」

HPDが挙げている主な理由は次のとおりです。

  • 家賃を払わない(不当な値上げのために払えない場合を除く)
  • 契約や建物の規則に大きく違反している
  • 迷惑行為や、建物と部屋を傷つける行為がある
  • 修理や内見のための立ち入りを、理由なく拒んでいる
  • 貸主か家族が自分で住む(入居者が65歳以上か障害がある場合は使えない)
  • 建物を取り壊す、または賃貸の市場から引き上げる

 

 

2. 家賃の値上げ。基準を超えると不当と推定される

ニューヨークの賃貸アパートが並ぶ通り

 

 

基準の決まり方

州の司法長官の正当な理由による立ち退き法の説明では、値上げが「直前の家賃の5%に、1年の物価の上昇率を足した率」を超えると、一般に不当とされます。不当とされない値上げの上限は10%です。基準は毎年、州の住宅局が公表します。

月4,000ドルの部屋なら、8.38%の値上げは335.20ドルで、新しい家賃は4,335.20ドルです。これを超える値上げは、それだけで違法になるわけではありませんが、立ち退きの手続きで不当と推定され、貸主のほうが理由を示す必要があります。

月の家賃 8.38%の値上げ額 値上げ後の家賃
3,000ドル 251.40ドル 3,251.40ドル
4,000ドル 335.20ドル 4,335.20ドル
6,000ドル 502.80ドル 6,502.80ドル

2026年5月4日時点の基準8.38%で計算しました。基準は毎年変わります。

 

基準を超える値上げが認められる場合

司法長官の説明によると、値上げが妥当かを判断するとき、裁判所は固定資産税の上昇を考えなければならず、経費の増加や大きな修繕も考えることができます。HPDによると、貸主は基準を超えて値上げするとき、その理由を通知に書きます。

注意

5%以上の値上げには、この法律とは別に、住んだ年数に応じて30日、60日、90日前までに知らせる州の決まりがあります。通知の期限は賃貸の更新通知のルールにまとめています。

 

 

3. 対象外の部屋。コンド、コープ、小さな貸主

ニューヨークの賃貸アパートが並ぶ通り

 

 

対象から外れる部屋の一覧

対象外になるもの 中身
小さな貸主 州内で持つ住戸と一軒家が合計10戸以下。LLCで持つ場合は、持ち主の個人ごとに数える
所有者が住む小さな建物 所有者が住んでいる10戸以下の建物
コンドとコープ コンドミニアムとコープとして所有されている住戸
新しい建物 2009年1月1日以降に入居許可が出た建物。許可から30年たつと対象になる
家賃の高い部屋 家賃が地域の公正市場家賃の245%を超える部屋。金額は州が毎年公表
規制のある部屋 家賃安定化、家賃統制の部屋と、公営住宅など家賃や所得に制限のある部屋
その他 又貸しをした元の入居者が戻る場合、仕事をやめたときの社宅、季節だけの住まい、寮など

HPDと州の司法長官の案内をもとに作成しました。

 

対象外でも通知は渡す

HPDによると、2024年8月18日から、貸主は契約を結ぶとき、更新するとき、5%を超えて値上げするときなどに、正当な理由による立ち退き法の通知を渡します。通知には部屋が対象かどうかを書き、対象外ならその理由に印を付けます。市の通知のひな形が公開されています。

家賃安定化の部屋は別の制度で、上げ幅は市の家賃指針委員会が決めます。2026年の決定はマムダニ市長の家賃凍結にまとめています。

 

 

4. 借りる方、貸す方が確かめること

ニューヨークの賃貸アパートが並ぶ通り

 

 

借りる方

  • 契約や更新のときに渡される通知で、部屋が対象かどうかを確かめる
  • 建物の入居許可の年と、コンドの住戸かどうかを確かめる
  • 更新の値上げ率を、その年の基準と比べる
  • 値上げの通知が、住んだ年数に応じた期限を守っているかを確かめる

 

貸す方

コンドの1戸を貸している場合は対象外ですが、通知は渡す決まりです。LLCで複数の物件を持つ場合は、持ち主の個人ごとに州内の戸数を数えるため、物件の持ち方で対象かどうかが変わることがあります。更新のときの家賃の決め方は、空室率と市場の家賃も合わせて見ます。ニューヨークの空室の少なさは家賃が高い理由。空室率1.41%にまとめています。

 

 

まとめ

ニューヨークの賃貸アパートが並ぶ通り

 

 

部屋が対象かどうかを、先に確かめる

ニューヨーク州の正当な理由による立ち退き法の対象の部屋では、2026年5月4日時点で8.38%を超える値上げが不当と推定され、上限は10%です。対象の部屋の契約を終わらせるには、原則として正当な理由が要ります。

コンドとコープの住戸、州内で10戸以下の小さな貸主、2009年以降に建った建物などは対象外ですが、貸主は通知を渡します。借りる方は通知で部屋が対象かを、貸す方は持ち方と通知の準備を、先に確かめておくと安心です。

 

よくある質問

ニューヨークの市場家賃の部屋に、値上げの上限はありますか。

州の正当な理由による立ち退き法の対象の部屋では、物価の上昇率に5%を足した基準(2026年5月4日時点で8.38%、上限10%)を超える値上げは不当と推定されます。違法になるわけではありませんが、立ち退きの手続きで貸主が理由を示す必要があり、最後は裁判所が判断します。

コンドミニアムを貸している場合も、この法律の対象ですか。

コンドミニアムとコープとして所有されている住戸は対象外です。州内で合計10戸以下しか持たない小さな貸主の部屋も対象外です。ただし貸主は、契約や更新のときに、部屋が対象かどうかと対象外の理由を書いた通知を入居者に渡します。

新しい建物の部屋は対象になりますか。

2009年1月1日以降に入居許可が出た建物は、許可から30年間は対象外です。たとえば2010年に建った建物は2040年から対象になります。家賃が地域の公正市場家賃の245%を超える部屋も対象外です。

家賃安定化の部屋の値上げはどう決まりますか。

家賃安定化の部屋はこの法律の対象外で、上げ幅は市の家賃指針委員会が毎年決めます。この法律が守るのは、家賃安定化ではない市場家賃の部屋の入居者です。

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