アメリカの大学に進学させる場合、費用の話は避けて通れません。私立大学では授業料と寮費、保険料を合わせた総額が年間9万ドルを超えるところもあり、4年間で日本円にして5,000万円を超える計算になります。この金額を前に、多くのご家庭が奨学金を検討されます。ところがアメリカの学費援助は日本の奨学金とは制度の設計が根本的に異なり、成績で出るものと、家計の状況で出るものが完全に別系統で運用されています。しかも留学生として申請するのか、州の居住者として申請するのかで、使える制度も金額もまったく変わります。本日はアメリカ大学の学費と奨学金の仕組みについて、制度の全体像と、居住形態によって何が変わるのかを見ていきましょう。
1. 学費は3つの区分でまったく違う

アメリカの大学の学費は、州立大学の州内料金、州立大学の州外料金、そして私立大学という3つの区分に分かれます。同じ大学の同じ講義を受けても、この区分によって支払う金額が倍以上変わります。
州立大学は各州の予算で運営されているため、その州に納税している世帯の子女には安い料金が適用されます。州外からの学生は州の財政に貢献していないという整理で、高い料金が設定されます。
実際に必要な金額は授業料だけではない
アメリカの大学は、授業料に加えて寮費、食費、教科書代、保険料を含めた就学に必要な総額を公表しています。この総額が援助の計算基礎になりますので、授業料だけを見て予算を立てると実態から乖離します。
各大学の費用と学生数の統計は米国教育統計センターが公表しており、大学間の比較に使えます。それでは、この費用に対してどのような援助があるのかを見ていきます。
2. 援助には返す必要のあるものとないものがある

アメリカの学費援助は4種類に分かれます。混同されやすいのですが、性格がまったく違います。
①給付型の助成金は家計の状況にもとづいて支給され、返済の必要がありません。②成績優秀者向けの奨学金は学業やスポーツの実績に対して支給され、これも返済不要です。③学生ローンは返済が必要な借入です。④学内就労の制度は大学内で働いて費用の一部に充てる仕組みです。
日本で奨学金と呼ばれるものの多くは③にあたりますが、アメリカで奨学金という場合は①または②を指すのが一般的です。この違いを踏まえずに情報を集めると、話が噛み合わなくなります。
家計にもとづく援助と成績にもとづく援助
家計にもとづく援助は、提出された家計情報から大学が算定した負担可能額と、就学に必要な総額との差額を埋めるという設計です。したがって資産をお持ちのご家庭では、この系統の援助はほとんど期待できません。
一方、成績にもとづく奨学金は家計の状況を問いません。学業成績や標準テストの点数、特定分野の実績に対して支給されるもので、大学の知名度が上がるほど競争は激しくなりますが、資産があることが不利に働くことはございません。
連邦政府の学費援助の仕組みについては連邦学生援助局の公式サイトに制度の説明があります。ただし連邦の援助は対象者の要件が定められており、留学生は対象外です。
3. 居住形態によって使える制度が変わる

ここが実務上、最も差が出る部分です。留学生として在籍する場合と、その州の居住者として在籍する場合とで、使える制度と支払う金額が大きく変わります。
州立大学の州内料金を適用してもらうには、各州が定める居住者要件を満たす必要があります。多くの州では一定期間その州に居住していること、就学以外の目的で居住していることなどが求められ、要件は州ごとに異なります。
ここで誤解が生じやすいのですが、その州に不動産を所有していることが、そのまま居住者資格を意味するわけではありません。居住実態、納税、運転免許や車の登録といった複数の要素で総合的に判断されるのが一般的です。物件をお持ちであることは要素の一つにはなりますが、それだけで決まるものではございません。
以下は費用と援助の関係を、在籍形態ごとに整理した表です。
| 在籍形態 | 学費水準 | 連邦の援助 | 成績にもとづく奨学金 |
|---|---|---|---|
| 州立・州内 | 最も低い | 対象 | 対象 |
| 州立・州外 | 州内の2倍前後 | 対象 | 対象 |
| 州立・留学生 | 州外と同水準以上 | 対象外 | 大学により対象 |
| 私立・国内 | 高い | 対象 | 対象 |
| 私立・留学生 | 国内と同額 | 対象外 | 大学により対象 |
※上記は、一般的な制度設計をまとめたものです。大学ごとに方針が異なり、留学生にも家計にもとづく援助を提供する大学も存在いたします。志望校の公表内容を個別にご確認ください。
4. 一方で「奨学金で学費は賄える」という見方について

教育費のご相談を受けるなかで、成績が良ければ奨学金で学費の大半は賄えるはずだというお考えを聞くことがあります。実際、成績優秀者向けの奨学金には高額なものが存在し、授業料の全額を免除する制度を設けている大学もございます。
この見立てが成り立つ場面は確かにあります。中堅規模の私立大学や州立大学のなかには、優秀な学生を集めるために手厚い奨学金を用意しているところがあり、条件が合えば負担は大きく下がります。
ただし、資産をお持ちのご家庭の場合には2つの留意点がございます。
第一に、最難関の大学ほど成績にもとづく奨学金を持っていません。上位の私立大学の多くは、援助を家計にもとづくものに一本化しており、成績優秀を理由とした減免という枠組み自体を用意していないところがあります。志望校の水準が上がるほど、この選択肢は細くなります。
第二に、家計にもとづく援助は資産を含めて算定されます。金融資産だけでなく、居住用以外の不動産が算定に含まれる場合があり、資産の持ち方によって援助額の判定が変わります。
ですので当社としては、奨学金を前提に進学計画を立てるのではなく、4年間の総額を自己資金で見積もったうえで、奨学金は上振れ要因として扱うことをご推奨いたします。そのうえで、住まいの選択が長期的な教育費に効いてくる場面もございます。公立学区の質が高い地域に住まいを構えれば、中等教育の段階で私立に通わせる必要が薄れます。
まとめ

アメリカの学費援助は、家計にもとづくものと成績にもとづくものが別系統で運用されています。資産をお持ちのご家庭にとって現実的な選択肢は後者ですが、最難関校ほどその枠を持っていないという構造があります。
また州立大学の学費は、居住者かどうかで倍前後の差が生じます。要件は州ごとに定められており、不動産の所有だけで判定されるものではございません。進学のタイミングから逆算して、どの州にどのような形で拠点を置くかを早い段階で整理しておくことが、結果として費用の差になって表れます。
ニューヨーク周辺の学区と住まいの関係については名門学区の不動産価格に関する記事を、教育を軸にした住まい選びについては教育移住と不動産の解説を、進学準備の全体像についてはアメリカ富裕層の教育戦略をあわせてご覧いただけますと幸いです。
当社はニューヨークを拠点に、お子様の教育を軸とした住まい選びをご支援しております。学区とご予算の兼ね合いについてもご相談を承っておりますので、お気軽にお声がけください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、各大学の制度内容を保証するものではありません。最新の要件は志望校および所管機関の公表情報をご確認ください。不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。
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