「アメリカに進出したいが、総コストの全体像が見えない」というご相談は、海外進出を検討している経営者・事業開発担当者の方から非常に多くいただきます。
2026年現在、日本企業がアメリカに進出する場合の初年度コストは、進出形態・拠点都市・ビザ取得の有無によって大きく異なりますが、最小規模で進めても300〜500万円、本格的な拠点設立では1,000〜3,000万円以上の費用を見込む必要があります。
私はニューヨークで事業を運営しながら、多くの日本企業・個人事業主のアメリカ進出をサポートしてきました。「思ったより安く済んだ」という方も「想定外のコストに驚いた」という方も両方います。本記事では、アメリカ進出にかかる費用を項目別に余すことなく解説します。
1. アメリカ進出の初期費用一覧


アメリカ進出の初期費用は、大きく「法的・行政コスト」「オフィス・インフラコスト」「人材コスト」「ビザ関連コスト」の4つに分類されます。
法的・行政コスト
まず避けられないのが法人設立と法務・税務の初期費用です。
法人設立費用:デラウェアまたはニューヨーク州でのLLC・C-Corp設立。登記費用自体は250ドル(約3.7万円)程度ですが、これは現地にお住まいで、ソーシャルナンバーなどがあり、また住所があるなど、非常にスムーズな場合に限定されます。さらにPublication要件(ニューヨーク州の場合)で1,000〜2,000ドル(約15〜30万円)が追加発生します。
弁護士費用(設立時):Operating Agreement・Articles of Organization作成などを含めると1,500〜5,000ドル(約22万5,000〜750万円)。事業の複雑さや弁護士の規模によって変動します。
会計士・税務顧問(初年度):法人税申告・会計設定・EIN取得サポートで2,000〜8,000ドル(約30〜120万円)。設立初年度は設定費用が加算されるため割高になります。
オフィス・インフラコスト
物理的な拠点の確保はコストの中でも大きな割合を占めます。
ニューヨーク市内の正規オフィス賃料は、ミッドタウンマンハッタンで1坪あたり月額8,000〜15,000円相当(平方フィートあたり60〜120ドル/年)が相場です。10坪(33㎡)程度の小規模オフィスでも、月額3,000〜6,000ドル(約45万〜90万円)の家賃が発生します。
費用を抑える選択肢として、コワーキングスペース(WeWork等)の活用があります。月額500〜2,000ドル(約7.5万〜30万円)で法人の住所・会議室・ネット環境を確保できます。さらに費用を抑えたい場合はバーチャルオフィス(月額100〜300ドル)も選択肢ですが、銀行口座開設や一部のビザ申請には物理的な拠点が求められる場合があります。
2. ニューヨーク vs 他都市のコスト比較

アメリカの主要都市の中で、ニューヨーク(マンハッタン)は最もコストが高い都市の一つです。進出先の都市選択によって、同じ事業でも年間コストが大きく変わります。
| コスト項目 | ニューヨーク(マンハッタン) | ロサンゼルス | マイアミ / フロリダ |
|---|---|---|---|
| 法人設立費用 | $200+Publication $1,000〜$2,000 | $70〜$800(CA) | $125(FL) |
| 弁護士・会計費用(初年度) | $5,000〜$15,000 | $4,000〜$12,000 | $3,000〜$10,000 |
| オフィス賃料(月額・10坪) | $4,000〜$8,000/月 | $2,500〜$5,000/月 | $1,500〜$3,500/月 |
| スタッフ給与(1名・年間) | $60,000〜$100,000 | $55,000〜$90,000 | $45,000〜$75,000 |
| 法人税率(州) | 7.25%(NY) | 8.84%(CA) | なし(FL・LLC) |
コスト面だけを見るとフロリダ(マイアミ)が最も有利ですが、ビジネスの顧客・ネットワークがニューヨーク集中型の場合はニューヨーク拠点に優位性があります。
ニューヨークは人材・ネットワーク・ブランド価値の観点で世界最高水準ですが、全コストが他都市の1.5〜2倍になります。「どこでビジネスをするか」と「どこに法人を置くか」を切り分けて考えることも戦略の一つです。
3. 進出形態別の費用と特徴

アメリカ進出の形態は主に「現地法人(子会社)設立」「支店(Branch Office)設置」「合弁会社(Joint Venture)」の3つです。それぞれのコスト特性を把握しておきましょう。
①現地法人(子会社)設立
最も一般的な形態で、日本の親会社とは独立した法人格を持ちます。現地の契約・採用・ビザ申請を独立して行えるメリットがある一方、設立コスト・維持費が最も高くなります。本格的なアメリカ事業展開には現地法人設立が標準的な選択です。
②支店(Branch Office)設置
日本の本社の延長としてアメリカに拠点を置く形態です。設立費用は現地法人より安く済む場合がありますが、日本の親会社がアメリカでの法的責任を直接負うことになるリスクがあります。規模の小さい試験的な進出に適しています。
③合弁会社(Joint Venture)
アメリカのパートナー企業と共同で法人を設立する形態です。現地のネットワーク・知識・顧客基盤を活用できますが、意思決定・利益配分・経営方針の合意形成に時間とコストが発生します。パートナー選定と契約書の整備が成功の鍵です。
4. よくある想定外コストと費用削減戦略

アメリカ進出において、多くの企業が想定外だったと語るコスト項目があります。事前に把握しておくことで、資金計画の精度を高めることができます。
想定外コスト①:コンプライアンス関連費用
アメリカでは雇用法・差別禁止法・データプライバシー法(CCPA等)など、日本と大きく異なる規制があります。コンプライアンス体制の整備にかかる法務費用は、年間5,000〜30,000ドル(約75万〜450万円)と幅広く、見落とされがちな費用です。
想定外コスト②:採用・人材コスト
アメリカでの人材採用費用は日本に比べて高く、ヘッドハンター経由の場合は採用者の年収の15〜30%が紹介手数料としてかかります。また、従業員の福利厚生(医療保険・401k等)の会社負担分は給与の20〜30%に相当することも多くあります。
想定外コスト③:ビザ申請・更新費用
E2ビザやその他の就労ビザの申請・更新には、本人分だけでなく家族分・従業員分も含めると相当な費用が発生します。長期的な事業展開では、ビザ費用を人件費計画に組み込んでおくことが重要です。
費用を抑えるための進出戦略
初期投資を最小化するためには、バーチャルオフィスとリモートワーク体制の活用が有効です。特に試験的な市場参入段階では、物理的なオフィスを持たずにコワーキングスペース+バーチャルオフィスで対応することで、オフィス固定費を大幅に削減できます。
また、フロリダ州・テキサス州など無税または低税率の州での法人設立も費用削減の選択肢の一つです。ただし、実際に事業を行う州への外国法人登録が必要となる場合はその費用も考慮が必要です。
アメリカ進出の全体像については海外進出サポートサービス、進出アプローチの詳細は海外進出アプローチガイドをご参照ください。大企業の海外進出事例については大企業の海外進出ガイドも参考になります。会社設立費用の詳細はアメリカ会社設立費用まとめをご覧ください。
まとめ:アメリカ進出の費用で最初に把握すべきこと

アメリカ進出にかかる費用を正確に把握するためには、登記費用・法務費用・オフィス費用だけでなく、人材・ビザ・コンプライアンス・想定外コストまで含めた総合的な試算が必要です。
小規模な進出から始めてコストを抑えながら段階的に拡大していく戦略と、最初から本格的な拠点を構えて市場獲得を優先する戦略、それぞれにメリット・デメリットがあります。重要なのは、自社の事業モデル・ターゲット市場・資金力に合った進出プランを設計することです。
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