ファミリーオフィスは、富裕層や超富裕層が代々受け継ぐ資産を効率的に管理・運用するための専門機関として、近年注目を集めています。2026年3月現在、世界の富裕層の増加に伴い、ファミリーオフィスの市場規模は急速に拡大しており、アメリカではその数が5,000を超えるとされています。
特に日本の富裕層にとって、グローバルな資産分散や次世代への資産承継を考える上で、ファミリーオフィスの設立は重要な選択肢となっています。単なる投資運用にとどまらず、税務最適化、事業承継、慈善活動、さらには家族のライフスタイル全般をサポートする包括的なサービスを提供することが特徴です。
一方で、ファミリーオフィスの設立には高額な運営コストがかかり、一般的には100億円以上の資産を持つ家族でなければ経済的なメリットを享受しにくいとされています。しかし、近年では複数の富裕層家族が共同で運営する「マルチファミリーオフィス」の形態も普及し、より多くの富裕層がそのサービスを利用できるようになりました。
本日はファミリーオフィスの仕組みから設立方法、そして日本の富裕層が海外進出を検討する際のポイントまで詳しく見ていきましょう。
1. ファミリーオフィスの基本概念と世界の動向

ファミリーオフィスとは、富裕層家族の資産管理を専門的に行う組織のことを指します。単なる資産運用会社とは異なり、税務対策、法務相談、慈善事業、さらには家族メンバーの教育支援まで、包括的なサービスを提供することが特徴です。
シングルファミリーオフィスとマルチファミリーオフィス
ファミリーオフィスには主に2つの形態があります。シングルファミリーオフィス(SFO)は、一つの富裕層家族が独自に設立・運営するもので、より個別化されたサービスが可能です。一方、マルチファミリーオフィス(MFO)は複数の富裕層家族が共同でコストを負担し、規模の経済を活かしてサービスを受ける形態です。
EY社の調査によると、2026年現在、世界のファミリーオフィス市場は年率15%で成長を続けており、特にアジア太平洋地域での需要が急速に拡大しています。中国、インド、そして日本の富裕層の増加が主要な要因とされています。
アメリカにおけるファミリーオフィスの発展
アメリカは世界最大のファミリーオフィス市場を誇り、米連邦準備制度理事会のデータでは、総資産10億ドル(約1,550億円)以上の超富裕層の約70%がファミリーオフィスを活用しているとされています。
特にニューヨーク、シリコンバレー、フロリダ州では、テクノロジー企業の創業者や金融業界の成功者を中心に、新たなファミリーオフィスの設立が相次いでいます。これらの地域では、優秀な人材の確保や規制環境の整備が進んでおり、ファミリーオフィス運営に最適な環境が整っています。
2. ファミリーオフィスが提供するサービス内容

ファミリーオフィスが提供するサービスは、従来の資産運用会社やプライベートバンクの範囲を大きく超えています。資産管理から家族のライフスタイルサポートまで、総合的なサービスを展開することで、富裕層家族の様々なニーズに対応しています。
投資・資産運用サービス
最も基本的なサービスである投資・資産運用では、株式、債券、不動産、プライベートエクイティ、ヘッジファンドなど、多様な投資商品への分散投資を行います。米証券取引委員会の規制のもと、機関投資家レベルの投資機会へのアクセスを提供することが可能です。
特に注目されているのは、ESG投資(環境・社会・ガバナンス投資)やインパクト投資の分野です。次世代の富裕層は、単なる利回り追求だけでなく、社会的意義のある投資を重視する傾向が強く、ファミリーオフィスもこうしたニーズに対応するサービスを拡充しています。
税務・法務・事業承継サポート
富裕層にとって税務最適化は極めて重要な課題です。ファミリーオフィスでは、国際税務に精通した専門家チームが、合法的な節税策の立案・実行をサポートします。特にアメリカでは、信託の活用や慈善寄付による税制優遇措置が充実しており、これらを組み合わせた複雑なストラクチャーの構築が可能です。
また、事業承継においては、次世代への円滑な資産移転を実現するため、ファミリーガバナンスの策定から実行まで、長期的な視点でサポートを行います。米国税庁の規制に準拠した贈与税・相続税対策も、ファミリーオフィスの重要な業務の一つです。
以下は、ファミリーオフィスが提供する主要なサービス内容をまとめた表です。
| サービス分野 | 具体的な内容 | 年間コスト目安 | 対象資産規模 |
|---|---|---|---|
| 投資運用 | ポートフォリオ管理・リスク分析 | 運用資産の0.5-1.0% | 50億円以上 |
| 税務・法務 | 国際税務・信託設立 | 年間2,000-5,000万円 | 100億円以上 |
| 事業承継 | ファミリーガバナンス策定 | 年間1,000-3,000万円 | 200億円以上 |
| ライフスタイル | 不動産管理・教育支援 | 年間500-2,000万円 | 50億円以上 |
| 慈善事業 | 財団設立・寄付管理 | 年間300-1,000万円 | 100億円以上 |
※上記は、アメリカにおけるファミリーオフィスサービスの一般的なコスト水準です(2026年3月現在、1ドル=155円換算)
3. ファミリーオフィス設立の要件と手続き

ファミリーオフィスの設立には、相当額の初期投資と継続的な運営コストが必要となります。一般的には総資産100億円以上が設立の目安とされていますが、近年では50億円程度でも検討可能なケースが増えています。
設立に必要な資産規模と運営コスト
PwC社の調査によると、シングルファミリーオフィスの年間運営コストは、運用資産の1.0-2.0%程度とされています。これには人件費、システム費用、規制対応費用、オフィス賃料などが含まれます。
例えば、100億円の資産を持つ家族がシングルファミリーオフィスを設立する場合、年間の運営コストは1億円から2億円程度が見込まれます。このため、規模の経済を活かしたマルチファミリーオフィスを選択する富裕層も多く見られます。
アメリカでの設立手続きと規制対応
アメリカでファミリーオフィスを設立する場合、SEC(証券取引委員会)への登録が必要となる場合があります。特に、運用資産が1億ドル(約155億円)を超える場合は、投資顧問会社としての登録が義務付けられています。
また、各州の金融監督当局への届出も必要であり、特にニューヨーク州やデラウェア州では、ファミリーオフィス向けの特別な規制枠組みが整備されています。コンプライアンス体制の構築は設立初期の重要な課題の一つです。
設立手続きの主な流れは以下の通りです。
①事前調査・戦略策定、家族の資産状況、目標、リスク許容度の詳細分析
②法的ストラクチャーの決定、LLC、信託、パートナーシップなどの最適な組織形態の選択
③規制登録・届出、SEC、州規制当局への必要な手続きの実施
④人材採用・システム構築、専門スタッフの確保とITインフラの整備
⑤運用開始・モニタリング、実際のサービス提供開始と継続的な改善
4. 日本の富裕層にとってのメリットと課題

日本の富裕層がファミリーオフィスを検討する背景には、グローバル化する資産管理ニーズと国内の税制環境の変化があります。特に2026年現在、日本の相続税率は最高55%と世界でも最高水準にあり、効果的な事業承継・資産承継策の必要性が高まっています。
グローバル資産分散の重要性
日本銀行のデータによると、日本の富裕層の海外資産比率は平均15-20%程度と、欧米の富裕層(40-50%)と比較して低い水準にとどまっています。円安進行や国内市場の成長鈍化を考慮すると、海外資産への分散投資の重要性はさらに高まっています。
アメリカのファミリーオフィスを活用することで、米国株式市場、不動産市場、さらには成長性の高いプライベートエクイティ投資へのアクセスが可能になります。特に、NASDAQに上場するテクノロジー企業や、シリコンバレーのスタートアップ投資などは、個人では参加が困難な投資機会です。
税務最適化とアメリカ投資家ビザの活用
日本の富裕層にとって、アメリカでのファミリーオフィス設立は税務最適化の観点からも魅力的です。適切なストラクチャーを構築することで、合法的な節税効果を期待できます。
また、当社が支援するE2投資家ビザを活用することで、ファミリーオフィスの設立と同時にアメリカでの居住権を取得することも可能です。最低投資額20万ドル(約3,100万円)からのビザ取得により、ファミリーオフィスの現地運営をより効率的に行うことができます。
一方で、課題も存在します。主なものは以下の通りです。
①高額な運営コスト、年間数千万円から数億円の継続的な費用負担
②専門人材の確保、国際税務、投資運用の高度な専門知識を持つ人材の採用困難
③複雑な規制対応、日米両国の金融規制、税制への継続的な対応が必要
④カルチャーギャップ、アメリカの投資文化、コミュニケーションスタイルへの適応
これらの課題を克服するためには、経験豊富な専門家との連携が不可欠です。当社では、ニューヨークを拠点として、日本の富裕層のアメリカ進出を総合的にサポートしており、ファミリーオフィス設立に関するご相談も多数お受けしています。
まとめ

ファミリーオフィスは、富裕層家族の資産を包括的に管理・運用する重要な仕組みとして、世界的に普及が進んでいます。2026年現在、特にアメリカでは5,000を超えるファミリーオフィスが運営されており、日本の富裕層にとっても重要な選択肢となっています。
投資運用から税務最適化、事業承継までの幅広いサービスを受けることができる一方で、設立・運営には相当なコストがかかるため、慎重な検討が必要です。特に総資産100億円以上の富裕層家族にとっては、長期的なメリットが期待できる戦略的な選択となるでしょう。
日本の富裕層がアメリカでファミリーオフィスを設立する際には、現地の規制環境や税制を熟知した専門家との連携が成功の鍵となります。グローバルな資産分散とともに、次世代への円滑な資産承継を実現するため、早期の戦略策定をご推奨いたします。
当社では、ニューヨークを拠点として、日本の富裕層の皆様のアメリカ進出を全面的にサポートしております。ファミリーオフィスの設立に関するご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。


















