アメリカと他国の二重国籍を持つ方々にとって、永住権取得や国籍に関する手続きは複雑で理解が困難な分野です。2026年4月現在、アメリカの移民法は二重国籍に対して比較的寛容な姿勢を示していますが、実際の手続きや注意点については多くの誤解が存在します。
特に日本人の場合、日本の国籍法が原則として二重国籍を認めていないため、アメリカ国籍取得時には複雑な選択を迫られることになります。また、アメリカの永住権(グリーンカード)保持者が他国の国籍を取得する場合の影響についても、正確な情報が不足しているのが現状です。
本日は二重国籍とアメリカ永住権の関係について詳しく見ていきましょう。
1. アメリカの二重国籍に対する基本方針

アメリカ政府の公式見解
アメリカ国務省は二重国籍に関する公式ガイダンスにおいて、二重国籍を「認めはしないが、禁止もしない」という立場を明確にしています。これは、他国の国籍を取得することでアメリカ国籍を自動的に失うことはないという意味です。
ただし、アメリカは他国の法律や慣行については関与せず、二重国籍者が他国でどのような義務を負うかについては当該国の法律に従うことになります。例えば、兵役義務や税務上の義務については、それぞれの国の法律が適用されます。
永住権保持者への影響
アメリカの永住権(グリーンカード)保持者が他国の国籍を取得した場合、永住権そのものに直接的な影響はありません。米国移民局(USCIS)の永住権維持ガイドラインでは、他国の国籍取得は永住権取り消しの理由として明示されていません。
しかし、他国の国籍取得後にアメリカでの居住実態がなくなった場合や、アメリカへの永続的居住意思を放棄したと見なされる行為があった場合には、永住権の維持に問題が生じる可能性があります。
2. 日本との二重国籍における特殊事情

日本の国籍法による制限
日本の国籍法は第11条において、「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と規定しています。これは、法務省の国籍に関する見解でも明確に示されており、アメリカ国籍を自発的に取得した時点で、日本国籍は自動的に失われることを意味します。
ただし、出生によって複数の国籍を取得した場合(例、アメリカ生まれの日本人の子供)については、国籍選択義務があるものの、即座に国籍を失うわけではありません。22歳までに国籍選択をしなければならないとされています。
実務上の取り扱い
実際の手続きにおいて、日本政府がアメリカ国籍取得を把握する主な経路は、本人からの届出や日本領事館での手続き時です。在米日本総領事館のガイダンスによると、アメリカ国籍取得後は速やかに国籍喪失届を提出する必要があります。
ただし、この届出を怠った場合でも、日本国籍は法律上既に失われているため、後日の手続きに影響が生じることがあります。特に相続手続きや不動産取引においては、国籍の変遷を証明する書類が必要になる場合があります。
3. 二重国籍者のアメリカ永住権取得プロセス

申請時の国籍申告
永住権申請時には、現在保有している全ての国籍を正確に申告する必要があります。フォームI-485(永住権申請書)では、過去の国籍変更履歴も含めて詳細な記載が求められます。
虚偽の申告や重要事実の隠蔽は、永住権取得後であっても取り消しの対象となる可能性があります。USCIS政策マニュアルでは、申請時の誠実性を特に重視すると明記されています。
必要書類と証明
二重国籍者の場合、以下の書類の提出が通常必要となります。
| 書類種類 | 主な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 出生証明書 | 出生地と両親の国籍確認 | 英語翻訳が必要 |
| パスポート | 全ての国のパスポート | 有効期限内のもの |
| 国籍証明書 | 各国政府発行の正式文書 | 発行から6ヶ月以内 |
| 軍事服務証明 | 兵役義務の履行状況 | 該当国で兵役がある場合 |
※上記は、一般的な二重国籍者が提出する主要書類の例です
4. 二重国籍維持の実務上の課題と対策

税務上の複雑性
二重国籍者の最も大きな課題の一つが税務処理です。アメリカは市民権者および永住権者に対して全世界所得への課税を行うため、他国での所得についても申告義務があります。IRS(内国歳入庁)の国際税務ガイドでは、海外所得の申告方法について詳細に説明されています。
特に問題となるのが二重課税です。日本との間には日米租税条約が締結されており、同一所得に対する二重課税を回避する仕組みがありますが、個別のケースでは専門的な判断が必要となります。
相続・贈与税の考慮事項
二重国籍者の相続・贈与については、両国の法律が適用される可能性があります。アメリカでは連邦遺産税・贈与税があり、日本でも相続税・贈与税の対象となる場合があります。
2026年4月現在、アメリカの遺産税免税額は1,334万ドル(約20億円、2026年4月現在、1ドル=155円換算)となっていますが、日本の相続税は基礎控除が3,000万円(配偶者1人、子供2人の場合は4,800万円)と大きく異なります。
実務的な対策方針
二重国籍維持における実務的な対策として、以下の点をご推奨いたします。
①専門家による定期的な相談体制の確立
②両国の税務申告を適切に行う会計システムの構築
③相続計画における両国法の調整
④金融口座の適切な管理と報告義務の履行
特にFBAR(外国銀行口座報告書)やFATCA報告については、アメリカの永住権者・市民権者には厳格な報告義務があり、違反した場合には重大な制裁措置が科される可能性があります。
まとめ

二重国籍とアメリカ永住権の関係は、法律的な複雑さと実務的な課題が交錯する分野です。アメリカ政府は二重国籍を認めない立場を取りながらも禁止はしておらず、永住権保持者が他国の国籍を取得しても永住権そのものに直接的な影響はありません。
しかし、日本のように二重国籍を認めない国の国民がアメリカ国籍を取得する場合には、母国の国籍を失うという重要な結果が生じます。また、税務上の義務や相続・贈与における複雑な処理など、実務的な課題も多数存在します。
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