近年、日本人とアメリカ人の国際結婚は増加傾向にありますが、同時に国際離婚のケースも増えています。アメリカ国勢調査局によると、2026年4月現在、アメリカ国内の離婚率は約40%となっており、国際結婚の場合はより複雑な手続きが必要となります。国際離婚は単なる婚姻関係の解消だけでなく、子どもの親権、財産分与、ビザステータスの変更など、多岐にわたる法的課題が生じます。
特にアメリカにおける国際離婚では、州法と連邦法の両方が適用されるため、日本の離婚制度とは大きく異なる点が多々あります。また、配偶者ビザで滞在している場合の身分変更手続きや、子どもがいる場合の親権問題は、専門的な知識なしには解決が困難です。本日は国際離婚におけるアメリカの手続きと注意点について詳しく見ていきましょう。
1. アメリカにおける離婚制度の基本

州法による離婚制度の違い
アメリカの離婚制度は、各州の州法によって管轄されるため、どの州で離婚手続きを行うかによって、手続きの内容や期間、費用が大きく異なります。コーネル大学法学部の資料によると、現在50州すべてで「無責離婚(No-fault divorce)」制度が採用されており、配偶者の過失を証明する必要がありません。
例えば、カリフォルニア州では「回復不能な婚姻破綻」を理由とした離婚が可能で、6ヶ月間の別居期間が必要です。一方、ニューヨーク州では2010年から無責離婚が導入されましたが、財産分与の規則はカリフォルニア州と異なります。
管轄権の要件
アメリカで離婚手続きを行うためには、まず管轄権(jurisdiction)の要件を満たす必要があります。アメリカ連邦裁判所の規定では、一般的に以下の条件のいずれかを満たす必要があります。
①夫婦のどちらか一方がその州に一定期間居住している
②結婚がその州で行われた
③離婚の原因がその州で発生した
居住期間の要件は州によって異なり、ネバダ州では6週間、ニューヨーク州では1年間の居住が必要です。この要件を満たさない場合、その州の裁判所は離婚手続きを受理しません。
2. 国際離婚における特有の法的課題

準拠法の決定
国際離婚では、どの国の法律を適用するかという「準拠法」の問題が生じます。アメリカ国務省によると、アメリカの裁判所は原則として州法を適用しますが、外国での婚姻関係や財産に関しては、その国の法律も考慮される場合があります。
特に日本人とアメリカ人の離婚では、日本の戸籍制度とアメリカの離婚判決の関係が複雑になります。日本では戸籍法により、外国の離婚判決を日本国内で有効にするためには、家庭裁判所での承認手続きが必要となる場合があります。
ビザステータスへの影響
配偶者ビザ(CR-1/IR-1)や婚約者ビザ(K-1)でアメリカに滞在している場合、離婚はビザステータスに直接的な影響を与えます。アメリカ移民局(USCIS)の規定では、条件付き永住権(CR-1)を取得してから2年以内に離婚した場合、条件解除のための特別な手続きが必要となります。
また、離婚後も合法的にアメリカに滞在するためには、他のビザカテゴリーへの変更申請や、DV(家庭内暴力)による自己申請など、新たな法的手続きが必要となる場合があります。
3. 子どもの親権と国際的な子の奪取

ハーグ条約の適用
国際離婚で子どもがいる場合、最も重要な課題の一つが親権問題です。アメリカと日本は両国ともハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)の締約国であり、アメリカ国務省ハーグ条約事務所によると、子どもの不法な国外移送や留置を防ぐための国際協力体制が整備されています。
ハーグ条約では、16歳未満の子どもが常居所地から不法に移送された場合、原則として元の常居所地への返還を求めることができます。ただし、子どもが重大な危険にさらされる場合や、子どもが返還を拒否し、かつ16歳に達している場合などの例外規定もあります。
親権に関する州法の違い
アメリカでは親権に関しても州法が適用されるため、どの州で手続きを行うかが重要です。以下は主要州における親権制度の比較表です。
| 州 | 親権の種類 | 判断基準 | 共同親権の原則 |
|---|---|---|---|
| カリフォルニア州 | 身上監護権・法定親権 | 子の最善の利益 | 原則として共同親権 |
| ニューヨーク州 | 親責任・居住権 | 子の最善の利益 | 状況に応じて判断 |
| テキサス州 | 親権・監護権 | 子の最善の利益 | 推定される共同親権 |
| フロリダ州 | 親責任・時間配分 | 子の最善の利益 | 原則として共同親権 |
※上記は、各州における親権制度の基本的な枠組みを示したものです。
多くの州では「子の最善の利益」を最優先に考慮し、両親の共同親権を推奨する傾向があります。ただし、家庭内暴力や薬物依存などの問題がある場合は、単独親権が認められることもあります。
4. 財産分与と国際的な資産の取り扱い

夫婦財産制度の州による違い
アメリカの財産分与制度は、大きく「共同財産州(Community Property State)」と「衡平分配州(Equitable Distribution State)」に分かれます。アメリカ内国歳入庁(IRS)によると、現在9州が共同財産制を採用しており、婚姻期間中に取得した財産は原則として夫婦の共有財産となります。
共同財産州では、離婚時に婚姻期間中の財産を50対50で分割するのが原則です。一方、衡平分配州では、裁判所が様々な要因を考慮して「公平」な分配を決定します。この違いは離婚後の経済状況に大きな影響を与えるため、どの州で手続きを行うかの選択が重要になります。
国際的な資産の特定と評価
日本とアメリカの両国に資産がある場合、その特定と評価が困難になることがあります。日本の不動産や銀行預金、株式投資などの資産価値をアメリカの裁判所が正確に把握し、適切に分配することは容易ではありません。
また、外国銀行口座報告書(FBAR)の提出義務や、日本の相続税法との関係も考慮する必要があります。2026年4月現在、10,000ドル(約1,550,000円、2026年4月現在、1ドル=155円換算)を超える外国の金融口座を保有するアメリカ居住者は、年次報告が義務付けられています。
5. 手続きの流れと必要書類

離婚手続きの基本的な流れ
アメリカでの国際離婚手続きは、以下のような流れで進行します。まず、管轄権のある州の家庭裁判所に離婚申立書(Petition for Dissolution of Marriage)を提出します。その後、相手方への書類送達、財産開示、調停やトライアルを経て、最終的に離婚判決が下されます。
手続きにかかる期間は州や事案の複雑さによって異なりますが、アメリカ弁護士会家族法部門によると、通常6ヶ月から2年程度を要します。争いがある場合はさらに長期間になることもあります。
国際離婚で必要となる特別書類
国際離婚では、一般的な離婚手続きに加えて、以下の書類が必要となる場合があります。
①日本の戸籍謄本(英訳版および認証)
②婚姻証明書(結婚が日本で行われた場合)
③パスポートおよびビザ関連書類
④日本国内の資産証明書
⑤子どもの出生証明書(両国版)
⑥領事認証または公証人による書類認証
これらの書類は、在アメリカ日本総領事館での認証や、専門的な翻訳が必要になる場合があります。特に日本の公文書をアメリカの裁判所で使用する場合は、ハーグ条約に基づくアポスティーユ認証が必要となることもあります。
弁護士の選択と費用
国際離婚では、国際法や移民法に精通した弁護士の選択が重要です。一般的な家族法弁護士では対応できない複雑な問題が多く含まれるためです。費用については、Martindale-Avvo法律事務所ディレクトリによると、国際離婚専門弁護士の時間単価は300ドルから800ドル(約46,500円から124,000円、2026年4月現在、1ドル=155円換算)程度となっています。
総費用は事案の複雑さによって大きく異なりますが、一般的に5,000ドルから50,000ドル(約775,000円から7,750,000円、2026年4月現在、1ドル=155円換算)程度が必要となることが多いです。
まとめ

国際離婚におけるアメリカでの手続きは、州法の複雑さ、ビザステータスへの影響、親権問題、国際的な財産分与など、多岐にわたる法的課題を含んでいます。特に子どもがいる場合のハーグ条約の適用や、配偶者ビザでの滞在者のステータス変更問題は、専門的な知識と経験が不可欠です。
成功する国際離婚のためには、早期の専門家への相談、適切な州での手続き選択、必要書類の準備、そして長期的な視点での計画立案が重要となります。また、日本とアメリカの両国での法的効力を確保するため、両国の法制度を理解した対応が必要です。
当社では、アメリカでの法的手続きに関する豊富な経験を基に、国際離婚における複雑な問題についてもサポートを提供しております。個別のケースに応じた最適な解決策をご提案いたしますので、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。


















