2026年現在、アメリカの不動産を売却した際に発生するキャピタルゲイン税(Capital Gains Tax)は、非居住外国人にとって最も複雑な税務課題のひとつです。日本に住みながら米国不動産を売却すると、FIRPTA(外国人不動産投資税法)に基づき、売却価格の15%が源泉徴収される仕組みが適用されます。この源泉徴収額は実際の税額ではなく「前払い」であり、確定申告を通じて精算されます。
つまり、適切な申告を行わなければ過払いのまま放置することになりかねません。本日は、非居住外国人がアメリカ不動産を売却した際のキャピタルゲイン税の計算方法、FIRPTA源泉徴収の仕組み、そして確定申告の手順を具体的に見ていきましょう。日米租税条約の適用を含め、納税額を合法的に最小化する方法もお伝えします。
1. FIRPTA源泉徴収の基本と非居住者の定義

売却価格の15%が自動的に差し引かれる
IRSのFIRPTA規定では、非居住外国人が米国内の不動産を売却する際、買主(または決済代理人)が売却価格の15%を源泉徴収してIRSに納付する義務があります。たとえば$500,000の物件を売却した場合、$75,000(約1,162万円)がクロージング時に差し引かれます(2026年3月現在、1ドル=155円換算)。
ただし例外規定があります。売却価格が$300,000以下で、買主が自己居住目的の場合、源泉徴収率は0%に引き下げられます。$300,001〜$1,000,000で買主が自己居住目的の場合は10%です。また、Form 8288-B(源泉徴収軽減申請)をIRSに事前提出することで、実際の税額に近い金額への減額が可能です。この手続きには通常90日程度かかるため、売却前に準備を始める必要があります。
非居住外国人の定義は、IRSのSubstantial Presence Testに基づきます。過去3年間の米国滞在日数が基準を満たさない場合、税務上は非居住者として扱われます。日本に主たる住居を持ち、年間180日未満の米国滞在であれば、通常は非居住者に該当します。
2. キャピタルゲイン税の計算方法

減価償却の「取り戻し」が盲点になりやすい
キャピタルゲインは「売却価格 − 調整基準価額(Adjusted Basis)」で算出されます。調整基準価額とは、取得価格+改良費用−減価償却累計額です。たとえば$400,000で購入し、$50,000の改装を施し、5年間で$60,000の減価償却を計上した物件を$550,000で売却した場合、計算は以下のようになります。
調整基準価額 = $400,000 + $50,000 − $60,000 = $390,000。キャピタルゲイン = $550,000 − $390,000 = $160,000。このうち、減価償却分$60,000はSection 1250のRecapture(取り戻し)として最大25%の税率が適用されます。残りの$100,000は長期キャピタルゲイン(保有1年超)として0〜20%の累進税率が適用されます。非居住外国人の場合、長期キャピタルゲイン税率は通常15%です。
| 項目 | 金額(USD) | 円換算 |
|---|---|---|
| 売却価格 | $550,000 | 約8,525万円 |
| 調整基準価額 | $390,000 | 約6,045万円 |
| キャピタルゲイン合計 | $160,000 | 約2,480万円 |
| Recapture税(25%) | $15,000 | 約232万円 |
| 長期CG税(15%) | $15,000 | 約232万円 |
| 実際の税額合計 | $30,000 | 約465万円 |
| FIRPTA源泉徴収額 | $82,500 | 約1,278万円 |
| 確定申告での還付額 | $52,500 | 約813万円 |
上記は一般的な計算例であり、州税や仲介手数料の控除により実際の税額は異なります。
3. 確定申告の手順とスケジュール

Form 1040-NRの提出が必須
非居住外国人が米国不動産を売却した場合、Form 1040-NR(非居住外国人用の確定申告書)の提出が義務付けられます。申告期限は翌年の6月15日(通常の4月15日ではなく、非居住者は2ヶ月の自動延長あり)です。さらにForm 4868で10月15日まで延長が可能です。
申告に必要な書類は以下の通りです。①HUD-1またはClosing Disclosure(決済明細書)。売却価格、手数料、源泉徴収額が記載されています。②Form 8288-A(源泉徴収証明書)。IRSから売主に送付されるコピーです。③減価償却スケジュール。保有期間中のDepreciationを年度ごとに算出した書類です。④経費の領収書。仲介手数料、弁護士費用、修繕費などの控除対象経費の証憑です。
以上で見てきたように、適切に確定申告を行えば、FIRPTA源泉徴収の過払い分が還付されます。米国CPAに依頼する場合の費用は$1,500〜$4,000が相場です。申告を怠ると源泉徴収額がそのまま最終税額となり、還付の機会を失います。
4. 日米租税条約の活用と二重課税の回避

日本での申告との整合性
日米租税条約の第13条(譲渡所得)では、不動産の売却益は不動産所在地国(米国)で課税できると規定されています。つまり、米国での課税は条約上認められており、日本側では外国税額控除を適用して二重課税を回避します。
一方で注意すべき点もあります。日本の所得税法では、不動産売却益の税率は短期(5年以下)39.63%、長期(5年超)20.315%です。米国での実効税率が日本の税率を下回る場合、差額分が日本で追加課税されます。たとえば、米国で15%の税率が適用された長期キャピタルゲインについて、日本の20.315%との差分5.315%が日本で課税されるケースがあります。
しかし、この仕組みにより合計税負担が日本の税率を超えることはありません。米国と日本の双方で申告を行うことは手続き上の負担がありますが、両国のCPAが連携すれば二重課税を確実に排除できます。日本側の確定申告では、外国税額控除を申告書第二表で計算し、「外国税額控除に関する明細書」を添付します。
まとめ

確定申告で源泉徴収の過払いを取り戻す
非居住外国人がアメリカ不動産を売却した場合、FIRPTA源泉徴収の過払い分は確定申告で還付可能です。売却前にForm 8288-Bを提出して源泉徴収額を減額し、売却後にForm 1040-NRで精算する二段階のアプローチが最も効率的です。減価償却のRecaptureや日米租税条約の適用を考慮した正確な税額計算には、国際税務に精通した米国CPAへの依頼をお勧めします。
Reinvent NYでは、提携するCPAおよび税務弁護士と連携し、不動産売却時の税務申告サポートを行っております。FIRPTA還付手続き、日本での確定申告との整合性確認まで一貫して対応いたします。ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。























