2026年5月現在、アメリカへの駐在や移住を検討される際に、最も気になる要素の一つが治安の問題です。メディアで報じられる銃犯罪や窃盗事件のニュースを見ると、「本当にアメリカは安全なのか」という不安を抱かれる方も多いでしょう。
ただし報道される事件と統計上の傾向は別物です。判断の材料になるのは、連邦や市の機関が公表している数字です。FBI(連邦捜査局)が2026年8月に公表した2025年の統計では、暴力犯罪の件数は2016年より12.6%、財産犯罪は33.6%少なく、殺人の率は人口10万人あたり4.1件と、1955年と1956年に並ぶ低さでした。
本日は、最新の統計データに基づくアメリカの治安情勢と、駐在員や移住者が知っておくべき安全対策について詳しく見ていきましょう。
地域特有のリスクと対策
都市部と郊外では犯罪の性質が異なり、対策も変える必要があります。大都市中心部では夜間の歩行時の注意が不可欠ですが、郊外の住宅地では車の盗難や住居侵入への備えが中心になります。FBIの2025年の統計では、侵入窃盗の53.4%が住宅で起き、自動車盗は全米で推計673,466件でした。地域コミュニティの防犯活動に参加することで、近隣住民との連携を強化し、異常な動きを早期に察知する体制を整えることが効果的です。
デジタルセキュリティの重要性
物理的な安全だけでなく、オンライン上の情報漏洩も深刻な問題です。FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)の2025年の報告書では、届け出は1,008,597件、被害額は約208億7,700万ドルで、前の年より26%増えました。強固なパスワード管理や二段階認証の導入を徹底し、不審なメールやリンクへのアクセスを避けるよう心がけましょう。また、公共のWi-Fi 環境では機密情報のやり取りを控えることで、被害を未然に防ぐことができます。
緊急時の対応マニュアル
いざという時に冷静に対処できるよう、事前の準備が重要です。緊急時は911、急ぎでない相談はニューヨーク市なら311です。警察や救急、総領事館の連絡先をスマホに保存し、家族間でも共有しておきましょう。また、初めて行く建物では出口を2か所確かめておくことを、米国の治安当局が勧めています。人の多い場所で銃撃事件に遭った場合は「逃げる、隠れる、戦う(Run, Hide, Fight)」の順で動くよう示されています。これらの準備が、万が一の事態における安心と安全を確保する鍵となります。
1. アメリカ全体の治安状況と統計データ

全米犯罪統計の推移
FBIの2025年の統計によると、アメリカの暴力犯罪は推計1,119,768件で前の年より9.3%、財産犯罪は5,245,768件で12.4%減りました。特に注目すべきは、暴力犯罪の率が1年で9.7%下がり、FBIが記録の残る中で最も大きな下げ幅と説明している点です。
人口10万人あたりの犯罪率で見ると、暴力犯罪は327.6件、財産犯罪は1,534.8件です。2016年と比べると、暴力犯罪の件数は12.6%、財産犯罪は33.6%少なくなっています。一方で、ネット詐欺は増えており、2025年の被害額は約208億7,700万ドル(約3兆2,360億円、2026年10月現在、1ドル=155円換算)に達しています。
犯罪の種類別分析
アメリカの犯罪は大きく4つのカテゴリーに分類されます。暴力犯罪(殺人、強盗、性犯罪、加重暴行)、財産犯罪(窃盗、住居侵入、車両盗難)、薬物犯罪、そしてホワイトカラー犯罪です。FBIの年次の統計で件数と率が示されるのは、このうち暴力犯罪と財産犯罪です。
駐在員や移住者にとって最も関係が深いのは財産犯罪で、暴力犯罪と財産犯罪を合わせた件数の約8割(82.4%)を占めています。財産犯罪の74.5%は窃盗です。警察に届けられなかった被害は、司法統計局(Bureau of Justice Statistics)の全米犯罪被害調査が推計しています。
2. 州別・都市別の数字

暴力犯罪の率が低い5州(FBI、2025年)
州ごとの数字は、FBIの犯罪データ・エクスプローラーで確かめられます。2025年の暴力犯罪の率が低かった5州は次のとおりです。民間の調査会社の「安全な州」の順位は、何を数えるかで顔ぶれが変わるため、ここではFBIの数字だけを並べています。
| 州名 | 暴力犯罪 2025年 | 暴力犯罪 2024年 | 財産犯罪 2025年 |
|---|---|---|---|
| メイン州 | 95.3 | 102.6 | 960.6 |
| コネチカット州 | 111.2 | 139.3 | 1,159.7 |
| ニューハンプシャー州 | 119.2 | 112.6 | 828.7 |
| ロードアイランド州 | 146.4 | 155.0 | 921.6 |
| ワイオミング州 | 187.7 | 212.5 | 1,098.2 |
※上記は、FBIの犯罪データ・エクスプローラー(2026年10月15日更新)で、各州の警察などが報告した件数を報告機関の管轄人口で割った、人口10万人あたりの件数です。全米は暴力犯罪327.6件、財産犯罪1,534.8件です。50州とワシントンD.C.の一覧はアメリカの犯罪率を州ごとに見る。FBIの2025年統計と総領事館の安全情報の使い方に載せています。
主要都市の治安状況
主要都市の統計は各市の警察が公表しています。ニューヨーク市の場合、NYPD統計と2026年1月の市長・市警本部長の発表によると、2025年の主要な犯罪の件数は前年より3%減り、5つの区すべてで下がりました。発砲事件は688件で、市の記録で最も少ない年でした。
サンフランシスコやロサンゼルスでは財産犯罪の件数が課題として報じられています。市ごとの数字は各市警察の公表資料でご確認ください。
3. 治安を左右する背景

社会経済的要因
犯罪の件数は、地域の雇用や所得、人口の動きとあわせて論じられることが多く、一つの要因で説明できるものではありません。同じ年でも州によって増えたところと減ったところがあり、ニューハンプシャー州は2025年に暴力犯罪の率が112.6件から119.2件へ上がった一方、全米では9.7%下がりました。
薬物問題と治安への影響
近年のアメリカで治安の問題として語られてきたのが、フェンタニルなどオピオイド系薬物の広がりです。疾病対策センター(CDC)の暫定集計(2026年10月4日時点のデータ)では、薬物の過剰摂取による死者は2023年5月までの1年間の約11万2,000人(予測値)から、2026年5月までの1年間は約6万6,000人まで減っています。
影響の出方は州や市によって違い、各州と市の保健当局が数字を公表しています。州政府や地方自治体は、薬物治療の拡充や取締りの強化などの対策を続けています。
4. 駐在員・移住者が実践すべき安全対策

居住地選択の重要ポイント
居住地をご検討される際は、公的機関が公開している統計をご自身でご確認いただくことをご推奨いたします。当社は地区を犯罪の数字で比べてご案内することはしていません。確かめ方は次のとおりです。
①犯罪統計の詳細確認、FBIの犯罪データ・エクスプローラーや市警察の公表資料で、過去5年間の推移を確認する
②学区の評価、学区の評価は住宅の資産価値と関係が深いため、学区データを自分で確認する
③通勤と生活動線、勤務先までの経路と所要時間を実際の時間帯で確かめる
④日中・夜間の現地視察、異なる時間帯での街の雰囲気を確認することが不可欠
日常生活における防犯対策
居住地が決定した後も、日常的な防犯意識の維持が重要です。国土安全保障省は「不審なものを見たら知らせる(If You See Something, Say Something)」を呼びかけており、日常の備えとしては次のような項目があります。
まず、外出時の行動パターンを一定化しないことです。同じ時間、同じルートでの移動は避け、可能な限り人通りの多い道路を選択しましょう。また、高額な装身具や電子機器の露出は控え、現金の携帯は最小限に抑えることをお勧めします。
自動車を利用する場合は、駐車場所の選択が重要です。人通りが多く、照明が十分な場所を選び、車内に貴重品を放置しないよう注意が必要です。住宅では、FBIの2025年の統計で侵入窃盗の53.4%が住宅で起き、手口の53.4%が力ずくの侵入でした。入館の管理、ドアマン、防犯カメラ、宅配物の保管室などの仕組みは建物ごとに違うため、内見の際に確かめるのが確実です。
まとめ

アメリカの治安情勢は、統計データを正確に理解し、適切な対策を講じることで十分に管理可能な範囲にあります。重要なのは、メディア報道に惑わされることなく、客観的なデータに基づいた判断を行うことです。
2025年のアメリカでは、暴力犯罪も財産犯罪も前の年から大きく減りました。州ごとの数字はアメリカの犯罪率を州ごとに見る。FBIの2025年統計と総領事館の安全情報の使い方にまとめています。地域ごとの数字は、FBIと各市警察が公表している一次資料でご確認ください。
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よくある質問
アメリカの住宅で侵入窃盗はどのくらい起きていますか。
FBIの2025年の統計では、侵入窃盗は全米で推計661,800件で、そのうち53.4%が住宅で起きています。件数は2016年の半分以下に減りました。入館の管理、ドアマン、防犯カメラ、宅配物の保管室などの仕組みは建物ごとに違うため、内見の際に確かめるのが確実です。
アメリカの治安は良くなっていますか。
FBIの統計では、2025年の暴力犯罪は人口10万人あたり327.6件で前の年より9.7%下がり、2016年と比べて件数で12.6%少なくなっています。殺人の率は1955年と1956年に並ぶ低さでした。一方、ネット詐欺の被害額は2025年に208億ドルを超え、前の年より26%増えています。
ネット詐欺の被害はどのくらいありますか。
FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)には、2025年に1,008,597件の届け出があり、被害額は約208億7,700万ドルでした。60歳以上の被害が約77億ドルと最も多く、暗号資産を使った投資詐欺が約72億ドルを占めています。
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