アメリカは世界有数のペット大国です。アメリカペット用品協会(APPA)の2025年の全米ペット飼い主調査では、ペットを飼っている世帯は9,500万世帯で、犬は7,100万世帯、猫は5,300万世帯でした。同協会の集計では、2025年のペット関連の支出は1,580億ドル(約24兆4,900億円、2026年10月現在、1ドル=155円換算)で、2026年は1,650億ドルの見込みです。
アメリカのペット文化は日本とは大きく異なり、ペットは単なる愛玩動物ではなく「家族の一員」として扱われます。多くの企業がペットフレンドリーなオフィス環境を整備し、賃貸物件でもペット可の住宅が一般的です。
一方で、アメリカでペットを飼うには厳格な法律や高額な維持費用への理解が必要であり、特に日本から移住する際には入国手続きや各州の規制について事前の準備が欠かせません。本日はアメリカのペット事情について詳しく見ていきましょう。
1. アメリカのペット飼育の現状と文化

ペット飼育率と人気動物の種類
アメリカでは犬が最も多くの世帯で飼われているペットで、アメリカペット用品協会(APPA)の2025年の調査では7,100万世帯が犬を飼っています。続いて猫が5,300万世帯、淡水魚が900万世帯、爬虫類が600万世帯です。頭数の内訳は同協会の有料の報告書で公表されています。
興味深いのは、アメリカではエキゾチックペット(爬虫類、鳥類、小動物)の飼育も一般的であることです。ハムスター、ウサギ、フェレット、さらにはトカゲやヘビなども人気があります。
ペットに対する社会的地位
アメリカではペットの社会的地位が非常に高く、多くの職場でペット同伴勤務が認められています。ただし、同伴を認めるかどうかは会社とオフィスの入るビルの規則で決まり、業種や職場によって大きく違います。赴任先の会社の就業規則で確かめるのが確実です。
また、アメリカの賃貸ではペット可の物件が多い一方で、犬の体重や頭数の上限、犬種の制限、毎月のペット料金(ペットレント)やペット用の保証金など、条件は物件ごとに大きく違います。ニューヨークでは建物の規約で決まることが多いため、内見の前に管理会社へ条件を確認するのが確実です。
| ペットの種類 | 飼育世帯数 | ペット飼育世帯に占める割合 | 住まいで確かめること |
|---|---|---|---|
| 犬 | 7,100万世帯 | 約75% | 体重・頭数・犬種の制限、ペット料金 |
| 猫 | 5,300万世帯 | 約56% | 頭数の上限、ペット料金 |
| 淡水魚 | 900万世帯 | 約9% | 水槽の大きさと重さの規約 |
| 小鳥 | 500万世帯 | 約5% | 鳴き声に関する規約 |
※上記は、APPAの2025年全米ペット飼い主調査(2026年版の業界報告に掲載)の世帯数と、それをペット飼育世帯9,500万世帯で割った割合です。複数の種類を飼う世帯があるため、合計は100%を超えます。
2. ペット飼育にかかる費用と経済的負担

初期費用と継続的な維持費
アメリカでペットを飼う費用は、獣医療費と人件費の高さから日本より高くなりやすいといえます。ASPCA(アメリカ動物愛護協会)の目安(2021年の改定)では、犬の初年度の費用は3,221ドル(約49万9,255円)、猫は1,904ドル(約29万5,120円)です。避妊・去勢手術、最初のワクチン、マイクロチップ、ケージなどの初期費用が含まれます。
2年目以降の年間の費用は、同じ目安で犬が1,391ドル(約21万5,605円)、猫が1,149ドル(約17万8,095円)です。これには獣医費、フード、予防薬、ペット保険、おもちゃ等が含まれます。犬の大きさや住む地域で金額は変わります。
医療費とペット保険の重要性
アメリカの獣医療費は高く、緊急手術や入院では高額な請求になることがあります。治療の前に見積もりを出してもらうのが一般的です。北米ペット健康保険協会(NAPHIA)の2026年6月の発表では、北米で保険に入っているペットは2025年末に760万頭で、前年の703万頭から8.5%増えました。
ASPCAの年間費用の目安では、ペット保険は犬で年516ドル(月43ドル程度、約6,665円)、猫で年348ドル(月29ドル程度、約4,495円)です。実際の保険料は、年齢、犬種、補償の割合、免責額で大きく変わります。
州別の費用格差
ペット関連の費用は、住む地域によって大きく変わります。比べるときは、住む予定の地域の動物病院の診察料、ペットシッターやRover.comなどで募集されている散歩・預かりの1回あたりの料金を、直接確かめるのが確実です。
これは獣医療費、グルーミング料金、ペットシッター料金などの地域差が主な要因となっています。
3. アメリカのペット関連法律と規制

連邦レベルの動物愛護法
アメリカでは1966年に制定された動物愛護法(Animal Welfare Act)が連邦レベルでの基本的な動物保護規制を定めています。アメリカ農務省(USDA)がこの法律の執行を担当しており、ペットの販売、輸送、展示に関する最低限の基準を設けています。
また、海外からアメリカへ連れて入る犬には疾病管理予防センター(CDC)の規則が、州をまたぐ引越しには移り住む州の受け入れ条件(狂犬病の接種証明など)が適用されるため、事前の確認が必要です。
州別の特殊な規制
各州には独自のペット飼育規制があります。例えば、カリフォルニア州では2019年からペットショップでの犬・猫・ウサギの販売を禁止し、保護動物の譲渡のみを認める法律が施行されています。
ニューヨーク市では犬の登録(ライセンス)が義務で、避妊・去勢済みの犬は年8.50ドル(約1,318円)、手術をしていない生後4か月以上の犬は年34ドル(約5,270円)です。また、公共の場では必ずリードの着用が義務付けられています。
以下は主要州の特徴的な規制です。
①テキサス州では、犬と猫は生後4か月までに狂犬病ワクチンを接種することが州法で義務づけられ、接種させないことは違反になります。州外から連れて入る生後12週以上の犬と猫には、接種証明書が必要です。
②フロリダ州では、2023年10月施行の州法で、市や郡が犬種だけを理由に飼育を禁じる条例が認められなくなりました。一方で、公営住宅の運営者が犬について規則を設けることは認められています。
③ハワイ州では狂犬病の検疫制度があり、事前の条件を満たせば5日以内の検疫(空港での直接放免を含む)、満たさない場合は最大120日間の検疫になります。
④アラスカ州のように冬の寒さが厳しい州では、屋外での飼い方について州法と市の条例の両方を確認する必要があります。基準は自治体ごとに違います。
賃貸住宅とペット規制
連邦公正住宅法では、身体障害者や精神的障害者の介助動物(Service Animals)および情緒支援動物(Emotional Support Animals)については、「ペット不可」の物件でも例外的に飼育が認められています。なお、2021年1月の米運輸省の規則改正で変わったのは飛行機での扱いで、航空会社は情緒支援動物を介助動物として扱う義務がなくなりました(ペットとして扱われます)。住宅での扱いとは別の話です。
4. 日本からアメリカへのペット移住手続き

入国前の必要手続き
日本からアメリカへペットを連れて移住する場合、CDCの犬の輸入規則に従った手続きが必要です。2024年8月1日からの規則では、過去6か月に狂犬病の高リスク国に滞在していない犬は、生後6か月以上であること、マイクロチップが入っていること、CDCの犬輸入フォームの受付票があること、到着時に健康に見えることが条件です。
まず、狂犬病ワクチン接種証明書の扱いです。日本のように狂犬病の高リスク国ではない国から入る犬には、CDCの規則では接種証明が求められていません。ただし、住む州の法律(ニューヨーク州やテキサス州など)で接種が義務づけられ、航空会社が証明書を求めることもあるため、獣医師の署名と日付の入った英文の証明書を用意しておくのが確実です。
次に、健康証明書です。日本を出るときは農林水産省の動物検疫所で輸出検査を受けます。航空会社が出発前の一定期間内に発行された健康証明書を求めることがあるため、かかりつけの獣医師に英文の証明書を作ってもらい、期限は航空会社の規定で確かめます。
航空会社の規制と輸送方法
多くの航空会社では機内持ち込み可能なペットのサイズ制限を設けており、一般的には8キログラム以下の小型犬・猫に限定されています。ユナイテッド航空やデルタ航空は機内持ち込みの料金を片道ごとに設けており、デルタ航空は2025年4月8日以降に発券した場合、米国内線で150ドル(約23,250円)、国際線で200ドル(約31,000円)です。
大型犬の場合は貨物での輸送となり、料金は航空会社、路線、ケージの大きさで決まるため、予約の際に見積もりを取ります。また、短頭種(フレンチブルドッグ、パグなど)は呼吸の負担から、貨物での輸送を受け付けない、または時期を限っている航空会社があるため、予約の前に各社の規定を確かめます。
到着後の手続きと注意点
アメリカ到着後は、居住州の動物管理部門への登録が必要な場合があります。また、州によっては追加のワクチン接種や健康診断が義務付けられているため、事前に確認が重要です。
ペット用品の持参については、日本で使用していたフードやおもちゃの一部をアメリカに持参することで、新環境への適応を支援できます。ただし、生肉や特定の植物性原料を含むフードは検疫で没収される可能性があるため注意が必要です。
まとめ

アメリカはペット大国として世界をリードしており、ペットとの共生社会が高度に発達しています。APPAの調査では9,500万世帯がペットを飼い、2025年のペット関連の支出は1,580億ドル(約24兆4,900億円)に上ります。
ペット飼育にかかる費用は日本と比較して高額ですが、ペット保険の普及やペットフレンドリーな社会制度により、ペットとの生活の質は非常に高水準にあります。各州の法規制は厳格である一方、ペットの権利保護も手厚く、真にペットを家族として扱う文化が根付いています。
日本からの移住を検討される方にとって、ペットとの移住は複雑な手続きを伴いますが、適切な準備により実現可能です。当社では、アメリカ移住に関する全体的なサポートを提供しており、ペットとの移住についてもご相談いただけます。
アメリカでのペット飼育や移住に関するご質問がございましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
アメリカで犬を飼っている世帯はどのくらいありますか。
アメリカペット用品協会(APPA)の2025年の調査では、ペットを飼っている9,500万世帯のうち7,100万世帯が犬を飼っています。猫は5,300万世帯です。賃貸ではペット可の物件が多い一方、体重や頭数の上限、ペット料金などの条件は物件ごとに違います。
犬をアメリカで飼う際の初年度費用はいくらですか。
ASPCAの目安(2021年の改定)では、犬の初年度の費用は3,221ドル(約49万9,255円)、2年目以降は年1,391ドル(約21万5,605円)です。避妊・去勢手術や最初のワクチンなどの初期費用と、フード、獣医費、予防薬、ペット保険などが含まれます。犬の大きさや住む地域で金額は変わります。
ニューヨーク市で犬を飼う際の登録料はいくらですか。
ニューヨーク市では犬の登録が義務で、避妊・去勢済みの犬は年8.50ドル(約1,318円)、手術をしていない生後4か月以上の犬は年34ドル(約5,270円)です。また、公共の場では必ずリードの着用が義務付けられています。各州には独自のペット飼育規制があり、事前に確認することが重要です。
日本からアメリカへ犬を連れて入国する際の狂犬病ワクチン接種時期はいつですか。
2024年8月1日からのCDCの規則では、日本のように狂犬病の高リスク国ではない国から入る犬には、接種証明は求められていません。条件は生後6か月以上、マイクロチップ、CDCの犬輸入フォームの受付票、健康であることです。ただし住む州の法律で接種が義務づけられ、航空会社が証明書を求めることもあるため、英文の接種証明書を用意しておくのが確実です。
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