2026年4月8日 Satoshi Onodera

海外移住時の国民年金手続き、任意加入や免除と受給の注意点について

住民票を海外へ移すと、国民年金の加入義務はなくなります。日本国籍で20歳以上65歳未満なら任意加入で続けられ、保険料は国内と同じ月17,920円(2026年度)です。任意加入しなかった海外在住期間(20歳以上60歳未満)は受給資格の10年には数えられますが年金額には反映されず、任意加入した人は保険料の免除や納付猶予を申請できません。ただし、加入するべきかは渡航の形で答えが変わります。日本の会社から赴任して厚生年金に加入したままの会社員は任意加入を考える必要がなく、同行する配偶者も届け出れば第3号被保険者を続けられます。

 

現地で就職する、事業を始める、永住を考えている場合は、帰国の見込みと、アメリカの年金の加入期間を日米社会保障協定でどう通算できるかを見てから決めることになります。

 

資格喪失と任意加入の手続き、受給資格と年金額の関係、繰り上げ・繰り下げ受給、保険料の払い方を順に見ていきます。

 

FOR EXPATS
ニューヨーク駐在の部屋探しと生活立ち上げ
着任日から逆算した流れ、入居審査の年収40倍、クレジット履歴、初期費用、入居後の手続きまで、駐在で必要なことを1ページにまとめています。

まとめて見る

1. 海外移住時の国民年金基本制度

1. 海外移住時の国民年金基本制度

 

住民票転出による国民年金資格の変化

海外移住において最初に理解すべきは、住民票を海外に転出した時点で国民年金の被保険者資格が自動的に失われることです。日本年金機構によると、日本国内に住所を有しなくなった日本国籍者は、第1号被保険者としての資格を失います。

 

この制度変更により、海外在住期間中は国民年金保険料の支払い義務がなくなります。保険料を納めなかった海外在住期間(20歳以上60歳未満)は「合算対象期間」として受給資格期間の10年には数えられますが、年金額には反映されません。

 

任意加入制度の仕組み

住民票を転出した後も国民年金への加入を継続したい場合は、任意加入制度を利用できます。この制度は20歳以上65歳未満の日本国籍者が対象となり、以下の条件を満たす必要があります。

 

①日本国籍を有していること
②20歳以上65歳未満であること
③厚生年金などの他の公的年金制度に加入していないこと
④老齢基礎年金の受給権を取得していないこと

 

任意加入制度を利用する場合、月額保険料は国内居住者と同額の17,920円(2026年度)となります。この保険料は、日本国内の預貯金口座からの引き落とし、または国内にいる親族などの協力者による納付で支払います。

 

2. 保険料の免除と猶予は任意加入では使えない

2. 保険料の免除と猶予は任意加入では使えない

 

免除は国内に住む第1号被保険者の制度

保険料の免除制度(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)は、日本国内に住む第1号被保険者のための制度です。日本年金機構は、国民年金に任意加入している方は免除・納付猶予や学生納付特例を申請できないとしています。海外に住みながら任意加入する場合は、保険料を全額納めるか、加入しないかのどちらかになります。

 

帰国して国内の第1号被保険者に戻れば免除を申請でき、承認を受けた期間は年金額に次の割合で反映されます。全額免除期間は満額の2分の1、4分の3免除は満額の8分の5、半額免除は満額の4分の3、4分の1免除は満額の8分の7として計算されます。

 

学生納付特例と納付猶予も同じ扱い

学生納付特例制度と納付猶予制度も、任意加入している方は申請できません。海外の大学や大学院に在学する間に保険料を納めない場合は任意加入しないことになり、その期間(20歳以上60歳未満)は合算対象期間として受給資格期間に数えられます。

 

なお、国内で学生納付特例や納付猶予を受けた期間は受給資格期間に算入されますが、あとから保険料を追納しなければ年金額には反映されません。

 

3. 年金受給権の確保と将来設計

3. 年金受給権の確保と将来設計

 

受給資格期間の重要性

老齢基礎年金を受給するためには、保険料納付済期間と免除期間などを合算して25年以上の加入期間が必要とされていましたが、2017年8月からは10年以上に短縮されました。アメリカ社会保障庁との社会保障協定により、アメリカでの加入期間も通算される場合があります。

 

海外移住期間中に任意加入を継続しない場合、帰国後に国民年金への再加入が可能です。ただし、空白期間が長期化すると、満額の老齢基礎年金(2026年度、昭和31年4月2日以後生まれの方で年額847,300円)を受給できなくなる可能性があります。

 

繰り上げ・繰り下げ受給の選択

海外在住者も日本国内居住者と同様に、60歳から65歳までの間に年金の繰り上げ受給を選択できます。ただし、繰り上げ1か月につき0.4%(2022年4月以降は0.5%から変更)の減額となり、一度選択すると取り消しできません。

 

逆に、65歳以降に受給開始を遅らせる繰り下げ受給を選択した場合、1か月につき0.7%の増額となります。75歳まで繰り下げた場合、受給額は84%増額されることになります。

 

以下は海外移住時の国民年金選択肢を整理した表です。

 

選択肢 メリット デメリット 適用条件
資格喪失 保険料負担なし 年金額に反映されない(受給資格期間には数える) 住民票転出により自動適用
任意加入 加入期間継続 保険料負担継続 20歳以上65歳未満の日本国籍者
保険料免除・納付猶予 国内に住む間の負担軽減 任意加入中は申請できない 日本国内に住む第1号被保険者で所得基準を満たす場合
学生納付特例 在学期間中の納付猶予 追納しないと年金額に反映されない 日本国内に住む学生(任意加入中は申請できない)

 

※上記は、海外移住時の国民年金制度における主要な選択肢とその特徴をまとめたものです。

 

4. 手続き方法と必要書類

4. 手続き方法と必要書類

 

転出届と年金手続きの流れ

海外移住時の国民年金手続きは、住民票の転出届と連動して進めることが効率的です。転出届を提出する際は、同時に国民年金の住所変更届も提出し、今後の加入継続意向を明確にします。

 

任意加入を希望する場合は、「国民年金被保険者関係届書(申出書)」を提出します。これから海外へ転出する方はお住まいの市区町村の窓口、すでに海外に住んでいる方は日本での最後の住所地を管轄する年金事務所(国内に協力者がいる場合は最後の住所地の市区町村)が窓口です。

 

保険料の支払い方法設定

海外在住中の保険料支払いには、以下の方法が利用可能です。日本の銀行口座を維持している場合は、口座振替が最も確実な方法となります。口座振替は納付対象月の翌月末日に引き落とされ、当月末に引き落とす早割(2026年度は月17,860円)も選べます。

 

国内にいる親族などの協力者が、本人に代わって保険料を納める方法もあります。

 

住所変更と連絡先管理

海外転居後は、年金機構への住所変更届を速やかに提出する必要があります。住所変更を怠ると、重要な通知書が届かず、将来的な手続きに支障をきたす可能性があります。

 

また、日本国内の連絡先として、家族や知人の住所を「送付先住所」として登録することも可能です。この場合、年金に関する通知は指定した国内住所に送付されます。

 

まとめ

まとめ

 

総合的な判断基準

海外移住時の国民年金手続きは、個々の状況に応じて最適な選択肢を検討する必要があります。移住期間の長さ、移住先での就労状況、将来の帰国予定、経済的負担能力などを総合的に判断して決定することが重要です。

 

日本の会社から赴任して厚生年金に加入したままの駐在員は、任意加入の手続きは要りません。同行する配偶者も、届け出れば第3号被保険者を続けられます。現地で就職する方や事業を始める方は、帰国の予定があれば任意加入で加入期間を続けることを検討します。一方、永住を前提とした移住の場合は、移住先の年金制度との比較検討も必要となります。

 

社会保障協定を締結している国への移住では、両国の年金制度を通算できる場合があるため、事前に詳細を確認することが肝要です。日本年金機構によると、2025年12月にオーストリアとの協定が発効し、協定が発効している国は24カ国になりました。ただし英国、韓国、中国、イタリアとの協定は保険料の二重負担の防止のみで、加入期間の通算はできません。

 

海外に住む間は免除や猶予を使えないため、任意加入するかどうかは、保険料を全額納め続けられるかと帰国の見込みで判断します。特に、若年層の方は長期的な視点での年金設計が重要となります。

 

海外移住における国民年金手続きは、将来の生活設計に直結する重要な決定です。不明な点がある場合は、年金事務所での相談や、海外移住に精通した専門家への相談を通じて、最適な選択を行うことをご推奨いたします。

 

海外移住全般に関するご相談やアメリカ移住サポートをご希望の方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

退職後にアメリカの不動産を持ち続ける場合、名義と課税方式の設計が手取りを左右します。全体像はアメリカの所得税率の記事にまとめています。

FOR EXPATSニューヨーク駐在の準備と暮らし(41件)

住まいを決める

渡航の前後にやること

口座・カード・通信・車

お金と税

家族と暮らし

会社のご担当者へ


HOUSING

ニューヨークの住まいのこと

CONTACT
まずはご相談ください

米国での資産形成と不動産について、あわせてご相談を承っております。

無料で相談する