皆さん、こんにちは。
当社サイトにご訪問をいただき、ありがとうございます。代表の小野寺です。
本記事では、当社Reinvent NY が2019年より多くの企業様の支援を続けてまいりました、「アメリカ法人設立」というテーマについて記載させていただきます。ぜひ皆さまのアメリカ進出にお役立ちできれば幸いです。
はじめに
アメリカ合衆国での法人設立は、グローバルな事業展開を目指す企業や起業家の皆さまにとって魅力的な選択肢です。世界最大の経済大国であるアメリカは、イノベーションの中心地であり、多様な市場機会を提供していると言えるでしょう。
しかし、単に法人を作っただけで、後々でそんなはずではなかった!と後悔するケースが相次ぎます。海外から米国に進出する際には、単純な法人登記以上の複雑な要素を考慮する必要があり、同内容を本記事では徹底開設いたします。
本ガイドでは、特に日本からアメリカに進出を考えている方々に向け、法人設立の詳細、税制の違い、州ごとの特徴、そして注意すべき点、について包括的に解説します。
アメリカでのビジネス展開を成功させるための重要な情報と洞察を提供し、皆様の事業計画立案に役立てていただくことを目的としています。
まず初めに、観点とすると、①法人形態、②登記する州、③資本構成、という3つが最重要キーになります。
米国法人設立の勘所として当社が2019年より行って来て、一つ言えることは、思った以上に容易ではない、ということです。
米国には法人登記を簡易に行うことができるサービスが多数ありますが、他国から米国に移住される方が法人登記する場合、おおよその場合、これらサービスは使いづらいというのが個人的な見解であります。
その理由としては以下5点が挙げられます。
①多くの場合、ソーシャルナンバーがない(ITINなどの取得は実は非常に煩雑で、時間がかかる)。
②米国に移住して法人設立する場合、ほとんどのケースで(生活費が高い、ビザ取得のハードルが高いことなどから)これまでビジネス経験ない人が1から米国に来てビジネスをするというより、海外法人の子会社であったり、何かしら複雑な要件での設立となることが多く(また計らずしても、税的にどの形態がベストかなど必ず法人設立過程で検討することになる)、そういった場合にこれらサービスでは対応していないことが数多くあります。
③また、②と重複しますが、単に法人を作る場合、それのみが目的となりますが、通常事業を行う場合は税観点を考慮するべきであり、法人設立のみを目的としたサービスでは(責任範囲がそこまで及ばないため)どの形が適しているのか本当の意味ではわからない。例えば、米国企業が海外法人と資本関係ある場合には、Tax申告時にForm 1120-Fなど関連会社の内容含め提出する報告書が増え、会計士費用が結構な額で増加します。
④海外からオペレーションを行うわけでなく、ビザを取得して米国に移住しようという場合、設立した法人形態・スキームを誤ると、かなり面倒なことになってしまい、余計な出費がかかる。
⑤そもそもLLC、C Corp、さらに全米各州で諸々のことが違うため(必ずしもデラウェアがベストというわけではない)、事業や目指すところ、今後の計画次第でこのバリエーションは何パターンにもなる。
などなどです。そのため、米国生まれの方や既に米国に住んでおりビザ等安定している方などを除き、海外から米国に法人を登記して(特に移住も視野に入れ)事業を行う場合は、法人設立代行にお金がかかっても2,000-3,000ドル程度のレンジと思うので、そこをケチって税関連の金銭的ロス・時間的なロスを大きくするよりも、経験ある方に委託した方が遥かに良い、というのが結論です。
さて、上記前提があれど、多くの企業の皆様にとって、必要となる情報をひとつの記事にまとめております。お役立ていただければ幸いです。
1. 法人形態の選択:LLC、C Corp、S Corpの比較
まず初めに、アメリカでの法人登記において、法人形態を選定する必要があります。最も一般的な法人形態は以下の3つです。
- LLC (Limited Liability Company)
2. C Corporation (C Corp)
3. S Corporation (S Corp)
それぞれの特徴、メリット、デメリットを詳しく見ていきましょう。
1.1 LLC (Limited Liability Company)
LLCは、柔軟性が高く、多くの小規模ビジネスに人気がある法人形態です。日本でいう合同会社のイメージで、アメリカで個人で起業される方の多くがこの形態を選びます。メリットは以下の通りです。
メリット:
設立と維持の容易さ: LLCの設立プロセスは比較的シンプルで、維持に必要な書類や手続きも他の法人形態と比べて少ないです。多くの州では、オンラインで数時間以内に設立することが可能です。
有限責任: LLCのオーナー(メンバー)は、会社の債務や法的責任から個人資産を保護することができます。これは、個人事業主や組合とは大きく異なる点です。
パススルー課税: LLCの収益は会社レベルでは課税されず、メンバーの個人所得として扱われます。これにより、法人税と個人所得税の二重課税を避けることができます。
柔軟な利益分配: LLCは、出資比率に関わらず、合意に基づいて自由に利益を分配することができます。これは、異なる貢献度を持つパートナー間で公平な分配を行う際に有用です。
経営構造の自由度: LLCは、メンバーによる直接管理や、マネージャーを任命しての間接管理など、柔軟な経営構造を選択できます。
と、非常にシンプルでメリットも多いLLC、アメリカの法人登記は100-300ドル程度と非常に安価な登記費用で完了しますが、LLCは後述するC Corporationよりも安価であることも特徴です。
なお、LLCは後ほどC Corporationに変更することも可能です。
続いてデメリットは以下のようになります。
デメリット:
フランチャイズ税: 一部の州(特にカリフォルニア州)では、高額な年間フランチャイズ税が課される場合があります。これは、収益の有無に関わらず支払う必要があるため、新規事業にとっては負担となる可能性があります。
投資家にとっての魅力: ベンチャーキャピタルなどの機関投資家は、一般的にLLCよりもC Corpを好む傾向があります。これは、C Corpの方が株式発行や所有権移転が容易であるためです。
国際的な認知度: 海外、特に日本では、LLCという形態への理解が十分でない場合があります。これは、取引先や金融機関との関係構築時に障害となる可能性があります。
自己雇用税: LLCのメンバーは、給与所得者と比べて高い自己雇用税(社会保障税と医療保険税)を支払う必要があります。これは、特に収益が高い場合に大きな負担となる可能性があります。
以上で見てもわかる通り、目的や法人用途に応じて判断するが大切です。
続いては、日本の株式会社にも近い、C Corporationを見ていきます。
1.2 C Corporation (C Corp)
C Corpは、大規模な事業や将来的に上場を目指す企業に適しています。C Corpを選ぶメリットは以下の通りです。
メリット:
無制限の成長可能性: C Corpは、無制限の株主数と複数の株式クラスを持つことができます。これにより、大規模な資金調達や、異なる権利を持つ投資家の受け入れが可能になります。
投資家の信頼: 多くの投資家、特にベンチャーキャピタルは、C Corpを好みます。これは、所有権の移転が容易で、投資家保護の仕組みが整っているためです。
国際的な認知度: C Corpは世界中で広く認知されている法人形態です。これは、海外での事業展開や、国際的な取引を行う際に有利に働きます。
税控除の幅広さ: C Corpは、従業員の健康保険やその他の福利厚生など、幅広い項目を経費として控除することができます。これにより、効果的な税務計画が可能になります。また親会社がある場合、親子間での損益通算が可能になります。
信頼性とステータス: 多くの大企業がC Corp形態を採用していることから、取引先や顧客に対して信頼性と安定性をアピールすることができます。
続いてデメリットは以下のようになります。
デメリット:
二重課税: C Corpの最大のデメリットは、法人レベルでの課税と、配当に対する個人所得税という二重課税の問題です。これにより、全体的な税負担が増加する可能性があります。
設立と維持のコスト: C Corpの設立と維持には、LLCと比べてより多くの書類作成と手続きが必要です。これには、定期的な株主総会の開催、詳細な記録の保持、年次報告書の提出などが含まれます。
複雑な規制: 特に公開企業の場合、SECなどの規制機関による厳しい監督があります。これには、定期的な財務報告や内部統制の確立など、高度なコンプライアンス要件が含まれます。
柔軟性の欠如: C Corpは、LLCと比べて経営構造や利益分配の面で柔軟性が低くなります。全ての決定は取締役会を通して行われ、配当は株式保有比率に応じて分配されます。
続いてはC Corpに似たもう一つの形、S Corpです。
1.3 S Corporation (S Corp)
S Corpは、小規模ビジネスに適した特殊な税制上の地位です。ただし、これは永住権を保持している方のみが設立できる、という点が特徴で、アメリカ外の方は多くの場合当てはまらない可能性があります。
メリットは以下の通りです。
メリット:
パススルー課税: S Corpの最大の利点は、LLCと同様にパススルー課税が適用されることです。これにより、法人レベルでの課税を回避し、二重課税の問題を解決することができます。
自己雇用税の節約: S Corpの株主は、適切な給与を受け取った上で、残りの利益を配当として受け取ることができます。この配当部分には自己雇用税が課されないため、全体的な税負担を軽減することができます。
有限責任: C Corpと同様に、S Corpも株主の個人資産を会社の債務や法的責任から保護します。
信頼性: S Corpは、LLCよりも伝統的で理解しやすい法人形態であるため、一部の取引先や金融機関からより信頼を得やすい場合があります。
続いてデメリットは以下のようになります。
デメリット:
株主の制限: S Corpの株主数は最大100人に制限されています。また、株主は個人(一部の信託や財団を除く)かつ米国市民または永住者でなければなりません。これにより、外国人投資家や法人からの出資が制限されます。
株式クラスの制限: S Corpは1種類の株式クラスしか持つことができません。これにより、異なる権利や優先順位を持つ投資家を受け入れることが困難になります。
厳格な利益分配: S Corpの利益は、株式保有比率に厳密に従って分配されなければなりません。これは、LLCのような柔軟な利益分配ができないことを意味します。
州による認識の違い: 一部の州ではS Corpステータスを認めていないか、異なる扱いをしています。これにより、州レベルでの課税や規制に関して複雑な状況が生じる可能性があります。
それぞれの特徴をまとめるとこのようになります。
特徴 | LLC | C Corporation | S Corporation |
---|---|---|---|
設立と維持 | 容易で低コスト | より複雑で高コスト | C Corpと同様だが、追加の書類が必要 |
有限責任 | あり | あり | あり |
課税 | パススルー課税 | 二重課税 | パススルー課税 |
投資家の魅力 | 中程度 | 高い | 中程度 |
国際的認知度 | 低い | 高い | 中程度 |
成長可能性 | 制限あり | 無制限 | 制限あり(株主数制限) |
経営構造の柔軟性 | 高い | 低い | 中程度 |
利益分配の柔軟性 | 高い | 低い | 低い |
株主の制限 | なし | なし | あり(100人まで、米国市民/永住者のみ) |
株式クラス | 該当なし | 複数可能 | 1種類のみ |
自己雇用税 | 全収入に対して課税 | 給与のみに課税 | 給与のみに課税、配当部分は免除 |
フランチャイズ税 | 一部の州で高額 | 一般的 | 一般的 |
税控除の幅 | 中程度 | 広い | C Corpと同様 |
コンプライアンス要件 | 比較的少ない | 厳格 | 厳格 |
適している事業規模 | 小〜中規模 | 中〜大規模 | 小規模 |
上場の可能性 | 難しい | 可能 | 制限あり |
ここまで、まずはどの形態で法人を設立するか、を見ていただきました。他にも多くの観点がありますが、ここではまず次に、海外から進出される際に考慮すべき点を挙げていきます。
1.4 海外からの進出者への考慮点
海外から米国に進出する場合、以下の点を特に考慮する必要があります。一部再掲もありますが、順番に見ていきましょう。
ビザ要件:
まずはビザ要件。法人設立後にアメリカへ移住する場合、マストになります。特にE-2投資家ビザやL-1駐在員ビザを取得する場合、法人形態が重要になります。一般的に、C Corpは投資家ビザの取得においてより有利です。これは、C Corpがより「実質的」な事業実体として認識されやすいためです。また、将来的な永住権申請を視野に入れている場合も、C Corpの方が有利な場合が多いです。
国際的な認知度:
C Corpは国際的に最も認知されている形態であり、海外の取引先や投資家との関係構築に有利です。日本の親会社や取引先との関係を考慮する場合、C Corpの方が理解されやすく、スムーズな取引や資金移動が可能になる可能性が高いです。
税務報告の複雑さ:
特に日本の親会社がある場合、C Corpの方が国際的な税務報告の観点から管理しやすい場合があります。これは、C Corpの会計処理や税務申告が国際的な基準に則っており、日本の会計システムとの整合性が取りやすいためです。また、移転価格税制への対応も、C Corpの方がスムーズに行える場合が多いです。親子間の会社で、損益通算が可能である点も大きいところ。
将来の成長計画:
将来的に大規模な資金調達や上場を計画している場合、C Corpが最適です。ベンチャーキャピタルや機関投資家は通常、C Corp形態を好みます。また、株式公開(IPO)を目指す場合も、C Corpが最も一般的で適切な選択肢となります。
コスト:
初期段階でコストを抑えたい場合はLLCが魅力的ですが、長期的な視点では必ずしも最適解とは限りません。例えば、後にC Corpに転換する場合、税務上の複雑な問題が発生する可能性があります。また、事業が成長し、複数の州で活動するようになった場合、C Corpの方が管理しやすくなる傾向があります。
利益還元の方法:
日本の親会社への利益還元を考える場合、配当、ロイヤリティ、利子など、さまざまな方法があります。C Corpの場合、これらの選択肢を柔軟に組み合わせることができ、税務上最適な戦略を立てやすくなります。
知的財産権の管理:
技術企業や研究開発を行う企業の場合、知的財産権の管理が重要になります。C Corpは、複雑な知的財産権の所有構造や、国際的なライセンス契約の管理に適しています。
資金調達の柔軟性:
将来的に日本や他の国からの投資を受け入れる可能性がある場合、C Corpの方が柔軟に対応できます。LLCやS Corpは、外国人投資家の受け入れに制限があるため、国際的な資金調達の障壁となる可能性があります。
結論として、海外から米国に進出する場合、特に長期的な成長や国際的な事業展開を視野に入れている場合は、C Corpが最も適切な選択肢となることが多いです。ただし、具体的な事業計画や財務状況、進出の目的によって最適な選択は変わり、引き続き解説していきます。
2. アメリカの州ごとの特徴
続いては、登記する州を決める必要があります。これは、その州に住まなくてはならない、ということではなく、アメリカ国外に住んでいても問題ありません。そして、(実際にオフィスを構えるなど)物理的にビジネスを行う州があれば、その州に支店として登録すれば良い、のです。(例えば、デラウェア州に法人を登記しているが、ニューヨーク州で飲食店をやりたい場合など)
アメリカの50州(およびワシントンD.C.)は、それぞれ独自の法律と規制を持っており、ビジネス環境も大きく異なります。ここでは、主要な州とその特徴を詳しく紹介します。
2.1 ビジネスフレンドリーな州
デラウェア州(圧倒的におすすめ)
実際に多くのスタートアップ企業がデラウェア州を選択しており、アメリカの投資家やVCによってはデラウェア州でなければ出資しない、と明言しているところも多くあると言われています。
それは一言で言えば、ビジネスオーナー、会社側に有利な州であるためです。
特徴:
– 企業法が非常に発達しており、ビジネス紛争に関する判例が豊富です。
– 専門性の高い衡平法裁判所(Court of Chancery)が存在し、ビジネス関連の訴訟を迅速に処理します。
– 株主のプライバシー保護が強く、匿名での会社所有が可能です。
メリット:
– 法人税が比較的低く、州外で発生した収入に対しては課税されません。
– 柔軟な企業構造が可能で、一人取締役会社の設立も認められています。
– 株式公開(IPO)を目指す企業にとって有利な法的環境が整っています。
– 適している業種:大企業、上場を目指す企業、持株会社
– 注意点:
– 実際の事業をデラウェア州で行わない場合、他州での外国企業登録が必要になる可能性があります。
– フランチャイズ税が毎年課されるため、小規模企業には負担となる場合があります。
ネバダ州
特徴:
– 法人税も個人所得税もありません。
– 株主のプライバシー保護が非常に強く、実質的所有者の開示が不要です。
メリット:
– 税負担が低く、特に小規模ビジネスにとって有利です。
– 法人設立の手続きが比較的簡単で、処理も迅速です。
– 適している業種:資産管理会社、小規模ビジネス、オンラインビジネス
注意点:
– 年間のビジネスライセンス料が必要です。
– 実際の事業をネバダ州外で行う場合、他州での課税や登録が必要になる可能性があります。
ワイオミング州
ワイオミング州は不動産投資をされる方が不動産所有者の法人として利用することが多く、それはプライバシー保護の観点です。
特徴:
– 法人税と個人所得税がありません。
– LLCの設立が非常に容易で、コストも低いです。
メリット:
– 年間維持費が低く、小規模ビジネスに適しています。
– 株主のプライバシー保護が強く、匿名での会社所有が可能です。
– 適している業種:スタートアップ、オンラインビジネス、資産保護を重視する企業
注意点:
– ビジネスの中心地から地理的に離れているため、実際の事業運営には不便な場合があります。
– 州外で事業を行う場合、他州での登録や課税の問題に注意が必要です。
2.2 大規模経済圏
大都市圏も見ていきましょう。
カリフォルニア州
特徴:
– 世界第5位の経済規模を誇り、技術革新のハブとして知られています。
– シリコンバレーを中心に、テクノロジー産業が非常に発達しています。
メリット:
– 巨大な消費者市場と豊富な人材プールがあります。
– ベンチャーキャピタルや投資家が多く、資金調達の機会が豊富です。
デメリット:
– 法人税率(8.84%)と個人所得税率(最高13.3%)が高いです。
– 環境規制や労働法が厳しく、コンプライアンスコストが高くなる傾向があります。
– 適している業種:テクノロジー、エンターテインメント、バイオテクノロジー、農業
また、カリフォルニア州は、売上の額を問わず、最低州税が年間800ドルと他州と比べてやや高額になる点も注意です。
注意点:
– 生活コストと賃金水準が非常に高く、特にサンフランシスコやロサンゼルスなどの大都市圏で顕著です。
– 水不足や地震リスクなど、自然環境に関する課題もあります。
ニューヨーク州
特徴:
– 世界的な金融の中心地であり、国際的なビジネスハブです。ブランディングにも非常に効果が高いです。
– 多様な産業が集積し、特にファッション、メディア、広告業界が強いです。
メリット:
– 巨大な消費者市場と高度な人材が豊富です。
– 国際的なネットワークへのアクセスが容易です。
デメリット:
– 法人税率(6.5%~7.25%)と個人所得税率(最高8.82%)が比較的高いです。なお、NYCはシティ税(1-3.5%程度)が加算されることが個人所得においては留意が必要です(3重課税)
– 規制環境が複雑で、特にニューヨーク市内では追加の規制や税金が適用される場合があります。
– 適している業種:金融サービス、メディア、ファッション、テクノロジー
注意点:
– 生活コストと事業運営コストが非常に高く、特にマンハッタンなどの中心部で顕著です。
– 競争が激しく、新規参入の障壁が高い業界もあります。
テキサス州
特徴:
– 急成長する経済と企業誘致に積極的な政策で知られています。
– エネルギー産業が強く、近年はテクノロジー産業も急成長しています。
メリット:
– 州法人税と個人所得税がありません(ただし、総収入に基づくフランチャイズ税があります)。
– 比較的低い生活コストと広大な土地が利用可能です。
– 適している業種:エネルギー、製造業、テクノロジー、物流
注意点:
– 一部の大都市圏(オースティン、ダラスなど)では、急速な成長に伴い生活コストが上昇しています。
– 夏季の高温や、沿岸部でのハリケーンリスクなど、気候面での課題もあります。
2.3 特定の産業に強い州
マサチューセッツ州
強み:
教育、バイオテクノロジー、医療技術
特徴:
– 世界トップクラスの大学(ハーバード、MIT等)が集積しています。
– バイオテクノロジーと医療技術の研究開発に適した環境が整っています。
注意点:
– 生活コストと事業運営コストが比較的高いです。
– 冬季の厳しい気候が事業運営に影響を与える可能性があります。
ミシガン州
強み:
自動車産業、製造業
特徴:
– 長年の自動車産業の歴史があり、関連技術や人材が豊富です。
– 近年は自動運転技術など、先端技術の開発も盛んです。
注意点:
– 経済が自動車産業に大きく依存しているため、その変動の影響を受けやすいです。
– 冬季の厳しい気候が物流などに影響を与える可能性があります。
フロリダ州
強み:
観光、不動産、航空宇宙
特徴:
– 年間を通じて温暖な気候で、観光産業が非常に発達しています。
– NASAのケネディ宇宙センターがあり、航空宇宙産業も強いです。
注意点:
– 季節による観光客の変動が大きく、関連産業への影響が大きいです。
– ハリケーンなどの自然災害リスクがあります。
2.4 労働法の特徴による分類
いくつか観点ごとにまとめると以下の様になります。
従業員に有利な州
代表的な州:
カリフォルニア州、ニューヨーク州、マサチューセッツ州
特徴:
– 強力な労働者保護法があり、従業員の権利が手厚く保護されています。
– 最低賃金が高く設定されています(例:カリフォルニア州は2021年時点で$14/時)。
– 有給休暇や病気休暇の付与が法律で義務付けられている場合があります。
雇用主への影響:
– 労務管理のコストが高くなる傾向があります。
– 従業員との紛争リスクが比較的高く、訴訟リスクにも注意が必要です。
雇用主に有利な州
代表的な州:
デラウェア州、テキサス州、フロリダ州、ノースカロライナ州
特徴:
– 労働組合の影響力が比較的弱く、「労働権法(Right-to-Work Law)」を採用している州が多いです。
– 最低賃金が連邦最低賃金($7.25/時)と同レベルに設定されていることが多いです。
– 雇用関連の規制が比較的緩やかです。
雇用主への影響:
– 労務コストを抑えやすい環境にあります。
– 柔軟な雇用管理が可能ですが、従業員の定着率に課題が生じる可能性もあります。
バランスの取れた州
代表的な州:
コロラド州、ミネソタ州
特徴:
– 労働者保護と事業のしやすさのバランスが取れています。
– 適度な最低賃金設定と、合理的な労働規制を持っています。
– 雇用主への影響:
– 労務コストと従業員満足度のバランスを取りやすい環境にあります。
– 長期的な人材確保と事業の安定性を重視する企業に適しています。
2.5 消費者市場の特徴
高所得消費者が多い州
代表的な州:
コネチカット州、ニュージャージー州、マサチューセッツ州
特徴:
– 平均世帯所得が高く、高級品やプレミアムサービスの市場が大きいです。
– 教育水準が高く、専門的なサービスへの需要が高い傾向にあります。
ビジネスへの影響:
– 高付加価値製品やサービスを提供する企業に適しています。
– マーケティングや顧客サービスの質が重要になります。
若い消費者が多い州
代表的な州:
ユタ州、テキサス州、ジョージア州
特徴:
– 平均年齢が低く、若年層の消費者が多いです。
– 新しい製品やサービス、テクノロジーの受け入れが早い傾向にあります。
ビジネスへの影響:
– イノベーティブな製品やサービスを展開する企業に適しています。
– デジタルマーケティングやソーシャルメディアの活用が重要になります。
高齢者が多い州
代表的な州:
フロリダ州、メイン州、ウェストバージニア州
特徴:
– 高齢者人口の割合が高く、退職者コミュニティが発達しています。
– 医療・ヘルスケア関連のサービスや製品の需要が高いです。
ビジネスへの影響:
– 医療、介護、レジャー関連のビジネスに適しています。
– 高齢者向けの製品やサービスの開発、マーケティングが重要になります。
2.6 州選択の注意点
最後に、州選択の注意点をいくつか挙げていきます。
税制だけでなく、総合的に判断する:
– 税率が低くても、他のコストや規制が厳しい場合があります。例えば、ネバダ州は法人税がありませんが、ビジネスライセンス料や他の費用が必要です。
– インフラ、人材の質、生活の質など、総合的な要素を考慮することが重要です。
事業の性質に合わせる:
– オンラインビジネスと製造業では最適な州が異なる可能性があります。例えば、製造業の場合は輸送コストや労働力の確保が重要ですが、オンラインビジネスの場合はインターネットインフラや人材の質が重要になります。
将来の成長を考慮する:
– 初期は小規模でも、将来の拡大計画に適した州を選ぶことが重要です。例えば、テクノロジー企業の場合、将来的な人材確保を考えるとカリフォルニア州やマサチューセッツ州が有利かもしれません。
– ただし、成長に伴う税負担の増加や規制の変化にも注意が必要です。
実際の事業所在地と登記地の分離:
– 多くの企業がデラウェア州に登記していますが、実際の事業はその州内で行っていない場合があります。この戦略のメリットとデメリットを理解することが重要です。
– メリット:柔軟な企業法制、専門的な裁判所システム、株主のプライバシー保護
– デメリット:追加の登録や税務申告が必要になる可能性、複数州での法令遵守の複雑さ
コンプライアンスコスト:
– 複数の州で事業を行う場合、各州での登録や税務申告が必要になる可能性があり、コストが増加します。
– 例えば、デラウェア州に登記し、カリフォルニア州で事業を行う場合、両州での年次報告書の提出や税務申告が必要になります。
産業クラスターの存在:
– 特定の産業が集中している地域では、関連するサプライヤーや専門家、人材が豊富に存在する可能性があります。
– 例えば、自動車産業はミシガン州、テクノロジー産業はカリフォルニア州やワシントン州、金融産業はニューヨーク州に集中しています。
州政府の経済開発プログラム:
– 多くの州が企業誘致のために様々な優遇措置を提供しています。これらのプログラムを活用することで、初期コストを抑えたり、成長を加速させたりすることができます。
– 例えば、テキサス州のTexas Enterprise Fundは、雇用創出や資本投資を行う企業に対して財政的インセンティブを提供しています。
自然災害リスク:
– 地理的位置によっては、ハリケーン、地震、洪水などの自然災害リスクが高い地域があります。これらのリスクは事業の継続性や保険コストに影響を与える可能性があります。
– 例えば、フロリダ州やルイジアナ州はハリケーンのリスクが高く、カリフォルニア州は地震のリスクが高いです。
生活の質と人材確保:
– 従業員の生活の質は、優秀な人材の確保と定着に大きく影響します。気候、文化的多様性、教育環境、レクリエーション施設などを考慮することが重要です。
– 例えば、コロラド州デンバーは、自然環境と都市生活のバランスが取れた場所として人気があり、テクノロジー企業の進出が増えています。
時差とビジネスの効率:
– 日本との時差を考慮すると、西海岸(カリフォルニア州など)の方が東海岸(ニューヨーク州など)よりもコミュニケーションがとりやすい場合があります。
– ただし、東海岸は欧州とのビジネスを行う上では有利な位置にあります。
これらの要素を総合的に検討し、自社の事業内容や将来の成長計画に最も適した州を選択することが重要です。また、進出後も定期的に立地戦略を見直し、必要に応じて事業所の移転や拡大を検討することも有効です。
なお、当社はニューヨーク州で、コンサルティング・不動産事業を行っており、代表もメンバーもニューヨーク州に住んでいるため、ニューヨーク州で登記をしております。こういった、シンプルな構造は多くの所用作業を減らすこともできるため、迷った場合は、ネット系サービスなどを除き、ご自身や従業員の方が活動される州で登記することもおすすめです。
3. アメリカ法人設立:子会社 vs 独立法人の比較
アメリカで法人を設立する際、日本本社の子会社とするか、別法人(資本関係なし)とするかは重要な決定です。それぞれにメリットとデメリットがあり、事業の目的や戦略によって最適な選択が異なります。以下、両者の比較を詳しく見ていきましょう。
3.1. 日本本社の子会社として設立する場合
メリット:
グループ経営の一貫性:
– 本社の経営方針や戦略を直接反映させやすい。
– ブランドイメージの統一や、グローバルな事業展開がしやすい。
資金調達の容易さ:
– 本社からの資金調達が比較的容易。
– 本社の信用力を活用した銀行融資も得やすい。
人材の交流:
– 本社からの人材派遣や、現地採用人材の本社への異動など、人材の交流が容易。
– グローバル人材の育成に寄与する。
技術やノウハウの共有:
– 本社の技術やノウハウを直接活用しやすい。
– 知的財産権の管理が容易。
税務上の利点:
– 連結納税制度の活用が可能(国によって異なる)。
– 移転価格税制の観点から、グループ内取引の正当性を示しやすい。
撤退の容易さ:
– 事業が上手くいかない場合、撤退の意思決定と実行が比較的容易。
デメリット:
規制上の制約:
– 外資規制のある業種では、子会社化により参入が制限される場合がある。
– 一部の政府調達案件で不利になる可能性がある。
意思決定の遅延:
– 重要な決定に本社の承認が必要となり、意思決定が遅くなる可能性がある。
– 現地のニーズに即座に対応しにくい場合がある。
コンプライアンスコストの増加:
– 日本の会社法や金融商品取引法などに基づく追加的な報告義務が発生。
– 内部統制やガバナンス体制の整備に追加コストがかかる。
現地化の難しさ:
– 「外国企業の子会社」というイメージにより、現地での人材採用や取引先の開拓が難しくなる可能性がある。
責任の集中:
– 子会社の法的責任が最終的に本社に及ぶ可能性がある。
3.2. 別法人(資本関係なし)として設立する場合
メリット:
意思決定の迅速さ:
– 現地の状況に応じて迅速な意思決定が可能。
– 市場の変化に柔軟に対応できる。
現地化の容易さ:
– 「現地企業」としてのイメージを構築しやすい。
– 現地の文化や商習慣に適応しやすい。
規制対応の柔軟性:
– 外資規制のある業種でも、現地企業として参入しやすい。
– 政府調達案件などでも不利にならない。
リスクの分散:
– 本社とは別法人であるため、事業リスクが本社に直接及びにくい。
パートナーシップの柔軟性:
– 現地企業や他の外国企業とのパートナーシップを柔軟に構築できる。
経営の自由度:
– 本社の方針に縛られず、現地の状況に最適な経営戦略を取れる。
デメリット:
資金調達の難しさ:
– 本社からの直接的な資金調達が難しい。
– 信用力の構築に時間がかかる場合がある。
ブランド力の弱さ:
– 本社のブランド力を直接活用できない。
– 知名度の構築に時間とコストがかかる。
技術やノウハウの制限:
– 本社の技術やノウハウを自由に活用できない場合がある。
– ライセンス契約などが必要になる可能性がある。
グローバル戦略との不整合:
– 本社のグローバル戦略と整合性を取るのが難しい場合がある。
シナジー効果の限定:
– 本社グループとのシナジー効果が限定的になる可能性がある。
人材交流の制限:
– 本社との人材交流が制限される。
– グローバル人材の育成が難しくなる可能性がある。
選択の基準
どちらを選択するかは、以下のような要因を考慮して決定する必要があります:
- 事業の目的:
– 本社事業の延長として展開するのか、全く新しい事業を開始するのか。
- 業界の特性:
– 規制の厳しさ、現地化の重要性、競争環境など。
- 資金力:
– 初期投資の大きさ、継続的な資金需要の見込みなど。
- 技術やノウハウの重要性:
– 本社の技術やノウハウへの依存度。
- 経営の自由度:
– 現地の裁量でどこまで意思決定したいか。
- リスク許容度:
– 本社がどこまでリスクを取れるか。
- 長期的な戦略:
– 将来的なM&Aや株式上場の可能性など。
結論
子会社として設立するか、別法人として設立するかは、それぞれの企業の状況や戦略によって異なります。子会社化はグループとしての一貫性や効率性を重視する場合に適しており、別法人化は現地化や意思決定の迅速性を重視する場合に適しています。
最終的な決定を行う前に、法務・税務の専門家に相談し、詳細な分析を行うことが重要です。また、ハイブリッドな形態(例:マイノリティ出資による関連会社化)も選択肢として考慮に値するかもしれません。
アメリカでの事業展開は大きな機会をもたらす一方で、適切な法人形態の選択は成功の鍵となります。慎重な検討と専門家の助言を基に、自社にとって最適な形態を選択することが、長期的な成功につながるでしょう。
4. 法人設立サービス利用の注意点
最後に冒頭でも述べましたが、米国には法人登記を簡易に行うことができるサービスが多数存在しますが、他国から米国に移住して法人登記を行う場合、これらのサービスの利用には注意が必要です。以下に、その理由と考慮すべき点を詳細に解説します。
4.1 ソーシャルセキュリティナンバー(SSN)の問題
- SSNを持っていない場合の困難:
– 多くの簡易法人設立サービスは、SSNを前提としています。
– 外国人の場合、SSNの代わりにITIN(個人納税者番号)の取得が必要ですが、この取得プロセスは非常に煩雑で時間がかかります。 - ITINの取得プロセス:
– ITINの申請には、厳格な本人確認書類が必要です。
– 申請から取得までに数週間から数ヶ月かかる場合があります。
– オンラインでの簡易な法人設立サービスでは、このプロセスをサポートしていないことが多くあります。
4.2 複雑な要件への対応
- 海外法人の子会社設立:
– 多くの場合、単純な新規法人設立ではなく、既存の海外法人の子会社として設立するケースが多いです。
– この場合、親会社との関係や出資構造の設定など、複雑な要件が発生します。 - ビザ取得との関連:
– 米国に移住してビジネスを行う場合、適切なビザの取得が必要です。
– 法人設立の形態やスキームが、ビザ取得の要件に合致しているかの確認が重要です。 - 税務上の最適化:
– 単に法人を設立するだけでなく、日米間の税務を考慮した最適な形態を選択する必要があります。
– 例えば、米国企業が海外法人と資本関係がある場合、Tax申告時にForm 1120-Fなど関連会社の内容を含む報告書の提出が必要となり、会計士費用が大幅に増加する可能性があります。
4.3 州選択の複雑性
- デラウェア州以外の選択肢:
– 必ずしもデラウェア州が最適な選択肢とは限りません。
– 事業内容、目標、将来計画によって、最適な州は異なります。 - 多様な選択肢:
– LLC、C Corp、S Corpなどの法人形態の選択。
– 各州の税制や規制の違い。
– これらの要素を組み合わせると、選択肢は何十通りにも上ります。
4.4 専門家の関与の重要性
上記の理由から、米国生まれの方や既に米国に住んでおりビザ等が安定している方以外、特に海外から米国に法人を登記して(移住も視野に入れ)事業を行う場合は、以下の点を考慮することが重要です:
- 専門家への依頼:
– 法人設立代行にかかる費用(2,000-3,000ドル程度)は、長期的な視点で見れば投資と考えるべきです。 - 潜在的なリスクの回避:
– 不適切な設立方法による税関連の金銭的損失。
– 時間的なロスや、後の修正にかかるコスト。
– ビザ申請時の問題や、将来の事業展開における制限。 - 総合的なアドバイス:
– 法人設立だけでなく、税務、ビザ、将来の事業計画を含めた総合的なアドバイスが得られます。 - 長期的な関係構築:
– 信頼できる専門家との関係は、事業の成長とともに継続的なサポートを受ける上で重要です。
4.5 結論
簡易な法人設立サービスは、確かに費用面では魅力的に見えますが、海外から米国に進出する場合、特に移住を伴う場合は、多くの落とし穴が存在します。これらのサービスでカバーされない重要な側面(税務戦略、ビザ要件、将来の成長計画など)を考慮すると、経験豊富な専門家に依頼することで、長期的には大きなメリットが得られます。
初期投資が多少増えたとしても、適切な設立方法を選択することで、将来的な問題やコストを大幅に削減できる可能性が高いと言えます。
5. 結論
アメリカでの法人設立と事業展開は、大きな可能性を秘めていると同時に、多くの課題も存在します。アメリカ進出は確かに挑戦的ですが、適切な準備と姿勢があれば、大きな成功につながる可能性を秘めています。
本ガイドが、皆様の米国でのビジネス成功の一助となれば幸いです。
記事をお読みいただき、ありがとうございました。
当社Reinvent NY Incでは、2019年よりアメリカ進出・移住される個人様、企業様のご支援を続け、あらゆる側面をサポートする総合的なサービスを提供しています。