ニューヨーク市におけるリテール不動産の変化、Eコマースの台頭と未来予測

2024年10月23日 Reinvent NY Inc

ニューヨーク市におけるリテール不動産の変化、Eコマースの台頭と未来予測

皆さん、こんにちは。

当社サイトにご訪問をいただき、また世界中の不動産投資の中からニューヨーク不動産にご関心をいただき、ありがとうございます。

本記事では、ニューヨーク市におけるリテール不動産の変化、Eコマースの台頭と未来予測というテーマについて記事を執筆させていただきます。

 

最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 

はじめに

ニューヨーク市は、華やかな店舗と賑わう街並みで、長年世界有数の商業都市として知られています。しかし、デジタル技術の進化やEコマースの成長が、これまでのリテール業界に大きな変革をもたらしています。

本記事では、この変化を多角的に分析し、今後ニューヨークのリテール不動産市場がどのように発展していくのかを考察していきます。

 

1. ニューヨーク市の不動産の変化

コロナ禍以前の状況

2019年、ニューヨーク市のリテール不動産市場はすでに変化の兆しを見せていました。全米不動産協会(National Association of Realtors)の報告によると、2019年第4四半期のリテール空室率は10.2%に達し、過去10年間で最も高い水準となっていました[1]。

この頃には、Eコマースの成長が実店舗の需要を徐々に押し下げている状況が顕在化し始めていました。

引用元:[1] National Association of Realtors. (2020). Commercial Real Estate Metro Market Reports 2019 Q4. 

 

パンデミックの影響

2020年3月、COVID-19パンデミックは変化の途中にあったニューヨーク市のリテール不動産市場に大きな影響を与えました。ロックダウンや観光客の減少、オンラインショッピングへの移行により、多くのリテール事業者が苦境に立たされました。

クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの調査では、2020年第2四半期のマンハッタンのリテール空室率は13.7%に上昇し、2000年以降で最も高い水準となりました[2]。特に、ミッドタウンやアッパーイーストサイドでは、空室率が20%を超えるエリアもありました。

引用元:[2] Cushman & Wakefield. (2020). Marketbeat Manhattan Retail Q2 2020. 

 

回復への道のり

2021年後半から2022年にかけて、ワクチン接種の進展と経済再開により、ニューヨーク市のリテール市場にも回復の兆しが見え始めました。ただし、この回復は一様ではありません。

CBREの2023年第3四半期のレポートによると、マンハッタン全体のリテール空室率は11.9%で、パンデミック前には戻っていないものの改善が進んでいます[3]。特に、ソーホーやメイデンレーンのような観光客に人気のエリアでは回復が顕著ですが、ミッドタウンのオフィス街ではテナントの回復が遅れています。

引用元:[3] CBRE. (2023). Manhattan Retail MarketView Q3 2023. 

 

2. ニューヨーク市の平均リテール家賃

ニューヨーク市のリテール家賃は、場所や階数によって大きく異なります。以下は、主要エリアごとの平均家賃の推移と、各フロアの特徴をご紹介いたします。

 

エリア別平均家賃

エリア 2019年Q4平均家賃

($/平方フィート/年)

2023年Q3平均家賃

($/平方フィート/年)

変化率
フィフスアベニュー(57丁目〜49丁目) $3,665 $2,477 -32.4%
タイムズスクエア(ブロードウェイ/7番街) $1,889 $1,385 -26.7%
ソーホー(ブロードウェイ) $477 $421 -11.7%
メイデンレーン $935 $824 -11.9%

(出典: CBRE, 2023 Q3 Manhattan Retail MarketView[3])

これらのデータから、パンデミック後、ニューヨーク市全体でリテール家賃が下落傾向にあることがわかります。特に、高級ブランドが集まるフィフスアベニューでの下落が顕著です。

一方、ソーホーやメイデンレーンといった小規模店舗が多いエリアでは、下落幅が小さくなっています。

 

フロア別の特徴と家賃傾向

1. グラウンドフロア(1階)

グラウンドフロアは最も高額な家賃が設定されることが多く、歩行者に目立ちやすく、アクセスが良い点から、ブランドの認知向上や売上に直結しやすいです。2023年第3四半期のデータでは、マンハッタンのプライムロケーションにおけるグラウンドフロアの平均家賃は、1平方フィートあたり年間$615です。

 

2. セカンドフロア(2階)

セカンドフロアの家賃はグラウンドフロアの50〜70%程度で、2023年第3四半期のマンハッタンでの平均は、1平方フィートあたり年間$378です。視認性は劣るものの、スペースの効率的な利用ができるため、レストランやオフィス、サービス業に人気です。

 

3. ロウアーレベル(地下階)

ロウアーレベルの家賃は、グラウンドフロアの30〜50%程度で、2023年第3四半期のマンハッタンにおける平均は1平方フィートあたり年間$245です。視認性は低いものの、広いスペースを比較的安価に確保できるため、倉庫やバックオフィスに多く利用されています。

(出典: JLL, New York City Retail Market Overview Q3 2023[4])

 

これらの家賃傾向はリテーラーの戦略に大きく影響しています。高額なグラウンドフロアの利用を最小限にし、セカンドフロアやロウアーレベルを効果的に活用してコスト削減を図る企業が増えています。

 

3. コロナ後の変化

COVID-19パンデミックは、ニューヨーク市のリテール不動産市場に劇的な変化をもたらしました。以下に、主要な変化とその影響を説明します。

 

1. Eコマースの急成長

外出制限により、オンラインショッピングが急増しました。全米小売業協会によると、2020年のEコマース売上高は前年比21.9%増の$969.4億に達し、2023年には$1.1兆を超えると予測されています[5]。この成長は、実店舗需要に大きな影響を与えています。

 

2. ポップアップストアの増加

社会的な不確実性の中、長期契約を避けるブランドが増え、短期のポップアップストアが台頭しました。2022年には、ニューヨーク市でのポップアップストアの数が2019年比で約35%増加しています[6]。これにより、柔軟な不動産契約のニーズが高まっています。

 

3. 体験型店舗の重要性

Eコマースとの差別化を図るため、リテーラーは体験を重視した店舗づくりに注力しています。ナイキのNYC House of Innovationでは、顧客が製品をカスタマイズできる体験を提供。2023年には、全米リテーラーの65%が顧客体験向上に投資する予定です[7]。

 

4. ラストマイル配送拠点の需要増

Eコマースの成長により、都市部での配送センター需要が増加。2023年第2四半期、ニューヨーク市のラストマイル物流施設の空室率は4.2%と低水準で、一部のリテールスペースが物流用途に転換されています[8]。

 

5. 賃貸条件の柔軟化

リスク分散とテナント誘致のため、不動産所有者は賃貸条件を柔軟化しています。2023年には、新規リテール契約の約40%が売上連動型賃料や短期契約などを含む柔軟な条件となっています[9]。

 

引用元:
[5] National Retail Federation. (2023). NRF Forecasts Retail Sales to Grow Between 6% and 8% in 2023.
[6] Commerzbank. (2023). Retail Real Estate Market Analysis 2023.
[7] Deloitte. (2023). 2023 Retail Industry Outlook.
[8] Prologis. (2023). Logistics Real Estate Report 2023 Q2.
[9] JLL. (2023). Future of Retail Real Estate 2023. 

 

4. ニューヨークを代表するリテール企業

ニューヨーク市には、世界的に有名なリテール企業が数多く存在し、都市の商業景観を形作っています。以下、代表的な企業とその特徴をご紹介します。

 

1. Macy’s(メイシーズ)

•創業: 1858年

•フラッグシップストア: 151 West 34th Street, New York, NY

アメリカを代表する百貨店で、特にヘラルド・スクエア店は世界最大級。2022年の総売上は約246億ドルで、その30%はデジタル販売が占めています[10]。オムニチャネル戦略を強化し、実店舗とオンラインの統合を進めています。

 

2. Tiffany & Co.(ティファニー)

•創業: 1837年

•フラッグシップストア: 727 Fifth Avenue, New York, NY

高級ジュエリーブランドのティファニーは、フィフスアベニューの旗艦店「The Landmark」を2023年にリニューアルオープン。LVMH傘下でも、ニューヨークの伝統を大切にしながら、グローバル展開を加速中です。

 

3. Bloomingdale’s(ブルーミングデールズ)

•創業: 1861年

•フラッグシップストア: 1000 Third Avenue, New York, NY

高級百貨店として知られ、2022年の売上は約61億ドル。オンライン販売が40%を超えており、デジタルマーケティングを強化しています[11]。

 

4. Saks Fifth Avenue(サックス・フィフス・アベニュー)

•創業: 1867年

•フラッグシップストア: 611 Fifth Avenue, New York, NY

ラグジュアリーブランドの集積地であるサックスは、2021年にEコマース事業を分社化し、企業価値25億ドルを得ました[12]。デジタル投資と実店舗体験の向上に注力しています。

 

5. Apple Store(アップルストア)

•創業: 2001年(初店舗開店)

•ニューヨーク旗艦店: 767 Fifth Avenue, New York, NY

ガラスキューブで有名なフィフスアベニュー店を含むアップルストアは、顧客体験を重視したリテール戦略で成功。2023年の実店舗売上は全体の約10%を占めています[13]。

 

引用元:
[10] Macy’s, Inc. (2023). Annual Report 2022.
[11] Bloomingdale’s. (2023). Financial Results 2022.
[12] Hudson’s Bay Company. (2021). Saks E-Commerce Business Establishes Standalone Entity Valued at $2.5 Billion.
[13] Apple Inc. (2023). Annual Report 2022. 

 

5. 最近ニューヨークで伸びている・進出してきたリテール企業

ニューヨーク市の小売業界は常に変化しており、新たな企業の参入や革新的な取り組みが市場に活力を与えています。近年注目されている企業を以下に紹介します。

 

1. Allbirds(オールバーズ)

•創業: 2016年

•ニューヨーク旗艦店: 73 Spring Street, New York, NY

サステナビリティに特化したフットウェアブランドで、特に再生可能素材を使った商品が特徴です。ウールやサトウキビ由来の自然素材を使用し、製品のライフサイクル全体での環境負荷削減に注力しています。ニューヨークには2018年に初の店舗をオープンしてから、2023年には売上が前年同期比22%増加し、直営店が全体売上の30%を占めるまでに成長しました[14]。

Allbirdsの成功の背景には、ミニマリズムなデザインと「履き心地の良さ」を重視した顧客体験があります。さらに、環境に配慮した体験型店舗では、製品の素材や製造過程を透明に説明する工夫を施しています。

こういった単なる購入体験にとどまらない「学びの場」としての機能が、特に環境意識の高い若者層に支持されています。

 

2. Warby Parker(ワービー・パーカー)

•創業: 2010年

•ニューヨーク旗艦店: 121 Greene Street, New York, NY

オンライン発のアイウェアブランドで、実店舗も急拡大。2023年には売上の約60%を直営店が占め、前年同期比で15%増加しています[15]。デジタルと実店舗の融合により、従来の眼鏡店のイメージを刷新しています。

 

3. Glossier(グロッシアー)

•創業: 2014年

•ニューヨーク旗艦店: 123 Lafayette Street, New York, NY

ソーシャルメディアを活用したビューティーブランドで、ミレニアル世代に人気。2022年にNYに新旗艦店をオープンし、SNS映えする店舗デザインとオンラインコミュニティの連携が特徴です。

 

4. Peloton(ペロトン)

•創業: 2012年

•ニューヨーク旗艦店: 156 5th Ave, New York, NY

フィットネス機器とオンラインクラスを提供し、パンデミック時に急成長。2023年には直営店を「体験センター」に転換し、実店舗売上が全体の約15%を占めています[16]。

 

5. Camp(キャンプ)

•創業: 2018年

•ニューヨーク旗艦店: 110 5th Ave, New York, NY

体験型の玩具店で、店内にプレイエリアやワークショップスペースを設け、家族向けに新たな価値を提供。2023年までにNY市内で3店舗を展開し、家族連れから人気を集めています。

 

引用元:
[14] Allbirds, Inc. (2023). Q2 2023 Financial Results.
[15] Warby Parker Inc. (2023). Q2 2023 Financial Results.
[16] Peloton Interactive, Inc. (2023). Q3 2023 Shareholder Letter. 

 

6. ニューヨークのリテール契約の特徴

ニューヨーク市のリテール不動産契約には、他の都市には見られないユニークな特徴があります。これらの特徴は、市場の高度な競争性と、テナントと不動産所有者の双方のニーズを反映しています。

 

1. 長期契約の伝統

ニューヨーク市では、10年以上の長期契約が一般的でした。これは、高額な内装工事費用を償却するためと、安定的な事業運営を確保するためです。しかし、近年の市場変化により、この傾向にも変化が見られます。

 

2. 段階的家賃上昇(Step-up Rent)

多くの契約で、毎年または数年ごとに家賃が段階的に上昇する「ステップアップ方式」が採用されています。例えば、10年契約で初年度の家賃が1平方フィートあたり年間$200だとすると、5年目には$220、10年目には$240というように上昇していきます。

 

3. パーセンテージレント(Percentage Rent)

高額な固定家賃に加えて、売上の一定割合を家賃として支払う「パーセンテージレント」条項が含まれることがあります。これは特に、ショッピングモールや人気の商業地区で一般的です。例えば、基本家賃に加えて、年間売上の6%を追加で支払うといった具合です。

 

4. 個人保証(Personal Guarantee)

ニューヨーク市では、テナント企業の財務状況に関わらず、個人保証を要求されることが多いです。これは、賃貸人にとってのリスク軽減策ですが、テナントにとっては大きな負担となる可能性があります。

 

5. 譲渡・転貸の制限

多くの契約で、賃借権の譲渡や物件の転貸に厳しい制限が設けられています。これは、不動産所有者がテナントミックスを管理し、物件の価値を維持するためです。

 

6. 改装権と原状回復義務

テナントが店舗内装を行う権利(改装権)は通常認められますが、契約終了時の原状回復義務も同時に課されることが多いです。この費用は甚大になる可能性があるため、契約交渉の重要なポイントとなります。

 

7. エスカレーション条項

固定費(税金、保険、共益費など)の上昇分を、テナントが負担する「エスカレーション条項」が一般的です。これにより、不動産所有者は長期的なコスト上昇リスクを軽減できます。

 

8. ポップアップ条項の増加

近年、短期の「ポップアップ」出店を可能にする条項を含む契約が増加しています。これにより、テナントは市場テストや季節限定の出店を柔軟に行うことができます。

 

9. コロナ禍の影響による新条項

パンデミック以降、「不可抗力条項」の範囲拡大や、ロックダウン時の家賃減額条項など、新たな条項が契約に盛り込まれるケースが増えています。

 

10. サステナビリティ条項

環境への配慮から、エネルギー効率の改善や廃棄物削減に関する条項が契約に含まれることが増えています。これは、ニューヨーク市の厳格な環境規制に対応するためでもあります。

CBREの2023年のレポートによると、これらの特徴的な契約条項は、ニューヨーク市のリテール不動産市場の柔軟性と強靭性を高めており、変化の激しい小売環境に適応するうえで重要な役割を果たしています[17]。

引用元:
[17] CBRE. (2023). U.S. Retail Real Estate Trends 2023. 

 

7. 今後のニューヨークのリテールの予測

ニューヨーク市のリテール市場は、大きな変革期を迎えています。

Eコマースの台頭、消費者行動の変化、そして都市そのものの変容が、この変革を加速させています。以下、専門家の見解や最新のデータを基に、ニューヨーク市のリテール市場の将来を予測いたします。

 

1. オムニチャネル戦略の進化

デロイトの2023年リテール産業展望によると、今後5年間で、成功するリテーラーの90%以上がオムニチャネル戦略を全面的に採用すると予測されています[18]。ニューヨーク市のリテーラーも例外ではなく、実店舗とオンラインチャネルのシームレスな統合が進むでしょう。

例えば、店舗での商品体験とオンラインでの購入、または逆のパターンなど、顧客のジャーニーに応じた柔軟な購買オプションが提供されるようになると考えられます。

 

2. 体験型リテールの発展

ニューヨーク市立大学の小売研究センターの調査によると、2025年までにニューヨーク市のリテールスペースの約30%が、何らかの「体験」を提供する形態に転換すると予測されています[19]。

これには、VRやARを活用した仮想試着、パーソナライズされた商品カスタマイズ体験、ブランドのストーリーを体感できるイマーシブな空間など、多様な形態が含まれるでしょう。

 

3. サステナビリティへの注力

環境意識の高まりと、ニューヨーク市の厳格な環境規制を背景に、サステナビリティはリテール戦略の中核となっていくでしょう。マッキンゼーの予測によると、2030年までに、ニューヨーク市のリテーラーの75%以上が、サーキュラーエコノミーモデルを採用すると見込まれています[20]。

これには、リサイクル製品の販売、修理サービスの提供、使用済み製品の回収プログラムなどが含まれます。

 

4. テクノロジーの更なる統合

IBMの調査によると、2025年までにニューヨーク市のリテーラーの60%以上が、AIや機械学習を活用した予測分析を導入すると予測されています[21]。これにより、需要予測の精度が向上し、在庫管理の効率化や、パーソナライズされたマーケティングの実現が可能になるでしょう。

また、無人店舗やスマートシェルフなど、先進的なテクノロジーを活用した新たな店舗形態も増加すると考えられます。

 

5. フレキシブルな店舗フォーマット

不確実性の高い市場環境に適応するため、多くのリテーラーがフレキシブルな店舗フォーマットを採用すると予想されます。

JLLの2023年リテール市場展望によると、2027年までにニューヨーク市のリテールスペースの20%以上が、可動式の什器や壁を採用し、迅速なレイアウト変更が可能な「アジャイル」な設計を取り入れると予測されています[22]。

 

6. ラストマイル物流の進化

Eコマースの成長に伴い、都市部での効率的な配送がますます重要になります。プロロジスの調査によると、2025年までにニューヨーク市内のリテールスペースの約5%が、ラストマイル配送センターとしての機能を持つようになると予測されています[23]。これには、既存の店舗バックヤードの一部を配送拠点として活用するケースも含まれます。

 

7. コミュニティハブとしての進化

リテールスペースは、単なる商品販売の場から、コミュニティの中心的な存在へと進化していくと予想されます。ニューヨーク市都市計画局の予測によると、2030年までに、市内のリテールスペースの40%以上が、商品販売以外の機能(イベントスペース、コワーキングエリア、文化活動の場など)を併設すると見込まれています[24]。これにより、リテールスペースは地域コミュニティの結節点としての役割を担うようになるでしょう。

 

8. 高度なパーソナライゼーション

AIと大規模データ分析の発展により、個々の顧客に合わせた極めて高度なパーソナライゼーションが可能になります。フォレスター・リサーチの予測によると、2028年までにニューヨーク市の主要リテーラーの80%以上が、リアルタイムの顧客データを活用した動的な価格設定や商品推奨を実施するようになると見込まれています[25]。これにより、各顧客に最適化された購買体験の提供が可能になります。

 

9. 健康・ウェルネス関連業態の拡大

パンデミック後の健康意識の高まりを反映し、健康・ウェルネス関連の業態が拡大すると予想されます。CBREの調査によると、2026年までにニューヨーク市のリテールスペースの15%以上が、フィットネス、ヘルスケア、メンタルウェルネス関連の業態によって占められるようになると予測されています[26]。

 

10. リテールとアートの融合

ニューヨーク市の文化的特性を活かし、リテールとアートの融合がさらに進むと考えられます。アート市場分析会社のArtTacticの予測によると、2029年までに、市内の高級ブランド店の50%以上が、常設または企画展示のアートギャラリースペースを併設するようになるとされています[27]。これにより、商業空間と文化的体験の境界がさらに曖昧になっていくでしょう。

 

引用元:
[18] Deloitte. (2023). 2023 Retail Industry Outlook.
[19] CUNY Retail Research Center. (2023). The Future of Retail Spaces in NYC 2025.
[20] McKinsey & Company. (2023). The State of Fashion 2023: Sustainability First.
[21] IBM. (2023). Retail 2025: Powering the Future with AI and Analytics.
[22] JLL. (2023). The Future of Retail 2023-2027.
[23] Prologis. (2023). Urban Logistics Trends 2025.
[24] New York City Department of City Planning. (2023). NYC Retail Spaces: Vision 2030.
[25] Forrester Research. (2023). The Future of Retail Customer Experience 2028.
[26] CBRE. (2023). Wellness in Retail: A Growing Trend.
[27] ArtTactic. (2023). Art & Luxury Retail Report 2029. 

 

結論

大きな転換期を迎えるニューヨーク市のリテール不動産市場。Eコマースの台頭、消費者行動の変化、テクノロジーの進化、そして都市の変容が、この市場を根本から変えつつあります。

不動産投資家やデベロッパーは、これらのトレンドを先取りし、柔軟性と適応力を備えた不動産開発・運営が求められます。用途変更が容易な設計や、テクノロジーインフラ、サステナビリティへの配慮が重要です。

ニューヨークはその多様性、創造性、レジリエンスにより、これまでも多くの変化を乗り越えてきました。リテール不動産市場も例外ではなく、今後もこの都市のダイナミズムと適応力が、新たなリテール景観を形作るでしょう。

そして、こういった変化は常にチャンスをもたらします。ニューヨーク市のリテール不動産市場に関わるすべてのステークホルダーが、変化を前向きに捉え、協力して新たな価値を創造することで、市場の持続的な発展につながっていくでしょう。

今後もニューヨークのリテール不動産市場の動向に注目し、変化に適応しながら新たなビジネスチャンスを見出していくことが重要です。

 

 

記事をお読みいいただき、ありがとうございました。

100年前も現在も、そして100年後も世界の中心であり続けるニューヨーク。そんなニューヨークでの不動産投資は大きな価値をもたらす可能性があること、ご理解いただけたかと存じます。

 

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